2023-08-29

住友不動産『金利が付く時代』の不動産経営戦略 リスクを見極めながら攻めの経営

2023年6月に開業した大型ビル「住友不動産東京三田ガーデンタワー」




金利上昇リスクにどう備える?

 23年7月、日本銀行がYCC(長短金利操作)政策を修正した。総裁が植田和男氏に交代して以降、正常化、つまり「金利が付く時代」へ踏み出すという観測が強い。

 金利上昇の可能性が出てくると、決まって不動産会社の株価が下がる。不動産開発における資金調達の金利が上がったり、消費者が支払う住宅ローン金利が上がって、購入を手控えたりという動きが懸念されるから。

 住友不動産は前期末時点で約3兆9000億円の有利子負債があるが「4兆円近い借金がある会社として、『金利が上がらない』というシナリオで楽観視してはいられない」と尾台氏。

 そのため、保守的な財務運営を展開。期間10年の長期借入比率は前期末時点で95%、固定金利比率は86%となっている。自己資本比率も10年前の15%から、ほぼ倍増の28%となった。

 シミュレーションだが、金利が0.5%上昇した時の業績影響は毎年20億円程度の利払い増。これは現在の賃貸事業の売上高約4000億円の0.5%。

 違う見方をすると、金利が上がるということは経済成長にもつながる。「金利上昇は短期的には住宅ローンに響くが、中長期的には金利が上がらない市場で不動産開発をするのか?ということにもなる。緩やかなインフレは望ましい。金利は上がるものだという前提で手を打つ」

 国内で手を打ちながら、一方で中長期の成長を見据えて海外の開拓も進める。その市場として選んだのはインド。

 前述のように尾台氏が2年間、海外を見た中で模索したのが「東京のような仕事ができる市場」。自前で土地を買い、長期保有で管理運営し、賃料を得て、その資金で再投資するモデル。

 インドは土地取得が難しい国だが、インド最大の経済都市・ムンバイで2件の官有地をオフィスビル用地として取得。合計約8万坪、約2000億円の投資規模となるオフィスビルを開発中。まずは5000億円をインドに投資し、国内経常利益約3000億円の1割、300億円を海外事業で稼ぐという目標。

「地政学、エネルギーなど様々な課題がある国だが、右肩上がりで成長するのは間違いない」として、リスクを睨みながら、長期での成長を目指す。

 国内外にリスクがある今だが、状況を慎重に見極めながら、投資を進めていく覚悟を見せる。

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