2021-03-03

「関西には潜在力がある。あとは実行あるのみ!」覚悟を共有した「関西財界セミナー」

オンライン開催での開会式で挨拶をする松本正義・関西経済連合会会長


観光振興や創造的復興の鍵は?

 コロナ禍以前、関西の特徴だったのがインバウンドだ。19に841万人となったインバウンドの激増で関西の観光業の景色は変わった。だが、今ではそれも蒸発。2021年度の域内経済成長率予想は2・8%と日本全体の3・5%よりも低い。

 観光のあり方について議論の場となったのが第5分科会。現状の課題とデジタル技術を絡ませた新たな観光の姿が続々と提案された。阪急電鉄会長の角和夫氏は「訪日客のストレスだった決済と情報提供の課題を徹底的に解決すべきだ」と提言。訪日客への過度な依存を反省しながらも、関西経済の復活には欠かせないという考えを示した。

 関西でインバウンドの玄関口となっている関西国際空港も厳しい。空港内の商業施設の店舗は半分超が一時閉店。運営する関西エアポート常務執行役員最高渉外責任者の三浦覚氏は「ピーチ・アビエーションに代表されるLCC(格安航空会社)が東南アジアでの〝生活の足〟になったように、日本でも位置づけが高くなっていくだろう」とコロナ後の期待を込める。

 また、関西住民の需要の掘り起こしを進める声も出た。ロイヤルホテル社長の䕃山秀一氏は「(自宅から約1時間圏内の短距離観光を指す)マイクロツーリズムの需要は一定数ある」とし、
「伊勢志摩―和歌山を筆頭に、関西に来るとリラックスできるような観光地として、ブランディングできればいい」と電通執行役員の鹿毛輝雅氏は強調する。

 そのためのカギになるのがデジタル技術だ。西日本電信電話(NTT西日本)社長の小林充佳氏は「観光もパーソナライズ化が進む。データを活用して個人と観光地を結び付けるマッチング・プラットフォームを関西全体で構築すべきだ」と語る。

 インバウンドだけに依存するのではなく、国内需要を創り出すための観光資源の掘り起こしはポスト・コロナで更に生かされてくることになる。

 デジタル化は日本の復興にも絡む。その観点で第2分科会において披露されたのが、デンマークの都市・オーデンセ市。人口20万人と伊丹市と同じ規模だが、「行政や企業のみならず、(個人情報も提供する)市民を含めた社会全体のデジタル化を進めた結果、ファナックや日本電産など約120社の企業が集うロボットクラスターを形成している」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部社会イノベーション・エバンジェリストの中島健祐氏)

 しかも、オーデンセ市関係者が参考にしたのが10年前に視察で訪れた大阪。産官学の連携の大切さを学んだということだが、当の大阪はどうか。連携を密にすることで大阪が秘める潜在力を引き起こせるはずである。

 付加価値創造の一例として、田辺三菱製薬相談役の三津家正之氏は情報を匿名化し、それを利活用することで公共の利益を実現すべきとし、「情報銀行のプロトタイプが必要だ」と訴えた。

 企業経営の中でデジタル化の必要性が叫ばれているのが働き
方改革。第4分科会で製造業におけるデジタル化が効果を発揮した事例をクボタ特任顧問の久保俊裕氏が紹介した。インドでの農機工場の立ち上げに当たり、ロックダウンの影響で日本人全員の帰国を余儀なくされたが、「数百台のカメラを設置したり、リモート会議を行って、日本人なしの現地人だけで、量産化工場の建設に成功した」。

 国際社会の中での日本の立ち位置を議論した第1分科会では、多方面にわたる視点からの主張が繰り広げられた。岩谷産業副社長の堀口誠氏からは「地球温暖化の解決に向けては水素エネルギー社会の実現が不可欠」と成長戦略に向けたコメント。

 企業経営の観点からは「ガバナンスにこだわりすぎていないか」(丸一鋼管会長の鈴木博之氏)、「米国式のカバナンスが利きすぎてリスクをとる人が少なくなった」(日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ常務の北村和彦氏)との声や若者の雇用を守るべきだとの意見も出た。


第1分科会で議長を務めた大林剛郎・大林組会長

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