2023-07-26

モンスターラボHD・鮄川宏樹のDX支援ビジネス 「ネットとパソコンがあれば、どこでも仕事ができる!」

鮄川宏樹・モンスターラボホールディングス社長



世界中にエンジニアやデザイナーを抱えて

 現在は世界20カ国・33拠点を構え、世界中にエンジニア・デザイナー・コンサルタントなどを抱える。同社の全従業員約1500人のうち、日本以外のグローバルの従業員は1200人を超える。そして22年12月期の売上高143億円のうちの半分は海外だ。一方で国内では顧客の8割以上が大手企業や上場企業のDXになる。

 要は、世界中にIT人材を抱えることで、各拠点の得意領域を集約したアジャイル開発で顧客のニーズに合った最適なソリューションを提供できるようにしているのだ。いわば世界中のIT人材が持っている技術やスキルの〝いいとこどり〟だ。国をまたぐグローバル化でもある。

 冒頭のクボタの事例では、ユーザーとサービスや商品の接点の作り込みにおいて開発実績が豊富な日本でこれを実践し、故障診断のニーズが最も高かった米国で運用開始と効果を検証。グローバル市場において知見を持ち、スピーディーにシステム開発ができるベトナムで構築した。3拠点での分業で高品質なアプリを開発したのだ。

「インターネットとパソコンさえあれば、世界中どこからでも仕事ができる」と鮄川氏。同社はパレスチナのガザ地区にもチームを持っている。「パレスチナはアラビア語圏。中東のサウジアラビアやUAEなどの仕事を受ける際の開発拠点になる」と話す。

 海外企業を買収して失敗したケースは大手企業にも多い。鮄川氏はどのような経営の舵取りを行っているのか。「重要なのは対話。買収した当社が買収先をコントロールするのではなく、サポートするという姿勢を示す。日本のやり方を押し付けない」。そのため鮄川氏自らが海外の拠点を回る日々を送る。

 鮄川氏がこのような経営スタイルを考えたのは2社目のベンチャー企業にいた2000年代前半。神戸大学卒業後にPw Cコンサルティングに入社。その後、ベンチャー企業を経験したのだが、「受託開発を始めて中国でIT開発拠点を設立したとき、国内のエンジニア不足が深刻になっていくと感じた」。

 さらに鮄川氏は「グローバル企業であるからこそ地方創生の役にも立てる」と語る。同氏は21年に出身地である島根県出雲市のチーフデジタルオフィサー(CDO)補佐官を兼務し、現市長の補佐官として行政や地域のDXにも取り組んでいる。

 一方で国内に目を向けると、地方創生に寄与した象徴的な出来事がある。ロシアのウクライナ侵攻を機に、ロシアで会社を経営している鮄川氏の友人がロシア人やウクライナ人の社員を含めて出雲市に会社ごと移転したのだ。「デジタル業務であればグローバルな企業と人材を同時に集めることができる」(同)。

 DX支援は大手からベンチャーまで、あらゆる企業が様々な切り口で手掛ける競争領域。その中で、グローバルな知見をフル活用するモンスターラボグループの独自戦略が今後も試される。

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