143人の「女子枠」を導入
─ 全く新しい大学に生まれ変わるということですね。
益 そういうことです。また、東工大が2024年4月入学の学士課程入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において女性を対象とした「女子枠」を導入したのも、その1つです。
東京医科歯科大学との統合は自分たちの研究分野や教育、専門分野をどうするかという危機感であり、新しいチャレンジだと申し上げました。女子枠も同じことです。理工系だけを考えると、例えば米マサチューセッツ工科大学(MIT)の学部における女子学生比率は5割です。しかし、東工大は13%です。
日本の理工系大学における女子学生比率は平均15~16%ほどで、そもそも低いのです。MITは博士課程でも女子学生が多いわけですから、当然女性の研究者も多くなります。
現在のMITの学長も2人目の女性です。大学でも女性が活躍するのが当たり前になっているのです。
やはりイノベーションを起こすために必要なのは多様性です。これは研究でも証明されています。イノベーションを起こすのは多様性であり、いろいろな人が切磋琢磨することが必要なのです。
そう考えると、同質性の高い日本は世界から見れば周回遅れと言わざるを得ません。
─ 女子枠はその足掛かりになると言えますね。
益 はい。しかも昨今はESGの流れが強くなっており、企業でも女性役員の比率を3割にするように言われています。そのためにも大学から女性を増やしていかねばなりません。我々ができることは女性が来てもしっかりと学べることができ、卒業した後の活躍の場を広げることです。我々はそこを努力しますので、女子学生も是非とも東工大を受けてくださいと。
─ どのくらいの人数を募集するのですか。
益 全学員の女子枠の募集人員は143人になります。学士1028人のうちの約14%に相当します。
この数字をいずれは5割にしたいと思っているのですが、まずは20%を超えることが、1つの閾値だと思っています。そのくらいになると、女性がいることが当たり前となり、どんどん増えていくと思います。
多様性という観点で言えば、25%ぐらい異質なものが入ってくると、それは異質ではなくなるという境界条件があります。東工大の研究所でも外国人の教員や研究者を意識的に増やしたのですが、10%では当たり前という感覚にはならず、20%を超えたあたりから英語で話すことも当たり前になりましたからね。
─ 学生に対し、学長として伝えている言葉はありますか。
益 「失敗を恐れずに挑戦するという大きな志を持とう」と言っています。東工大は志を持って挑戦する人材を育てる大学であるからです。それこそが東工大の志でもあります。