2023-07-19

日本取引所グループCEO・山道裕己の「日本に魅力はある。内向きにならずにもっと外を向いて」

山道裕己・日本取引所グループ・グループCEO




日本の株が今、注目されて……

 今、日本株が内外の投資家から注目されている。

「MSCIという世界の株式市場のインデックスがあるんですが、それを見ても、日本株の現実のウェイトよりも低く見ているポートフォリオ(投資戦略)がかなりあったと思います」と山道氏は語る。

 MSCIの日本株のウェイトは6.8%位だったのが、機関投資家としては5%から5.5%位に設定する所が多かった。

 ところが、内外の投資家が動き始めた。

 米国の著名投資家、W・バフェット氏が今年4月来日し、「これからも日本に投資し続ける」と追加投資を表明。特に、日本の商社株に注目していると氏は発言。三菱商事、三井物産などは前期(2023年3月期)で最終利益1兆円以上をあげ、業績好調と重なり株価が上昇。

 三菱商事は時価総額で10兆円を超し、全体の時価総額8位にまでランキングが上昇。今年3月下旬まで、時価総額6兆円台でランキング16位だったのが、この3カ月間で3兆円以上増加したことになる。

 もっとも、商社界首脳は、この株価高騰に浮かれておらず、「やるべき事をしっかりやっていくだけ」と緊張感を持って、新たな投資に臨む。

 これまでDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化や生成AI(人工知能)の登場で、問屋事業やメディア(媒体)など仲介業務を行っていた産業は苦しくなるという見方が強い。

 その中で、日本の総合商社は再生エネルギーやバイオマスなど最先端領域への投資を実行。また、仲介業務でも異色の提携や企業連合をインテグレート(統合)していくなど、したたかさと知恵を発揮。「商社というより、総合商社という位置付けが市場に評価されているのだと思う」とは某社長の弁。

 中抜き現象が進み、仲介産業は駄目だ─という一般論では語れない時代。その意味では、個別企業の強さ、個別の知恵や事業戦略が問われる時代と言っていい。

 また、時価総額ランキングでトヨタに次いで2位の座に付けるキーエンス。FAセンサーなど計測制御機器大手だが、時価総額は17兆円台で、ソニーグループと常に2位の座を争う。

 売上高は約9000億円、営業利益は約5000億円と、売上高営業利益率は50%以上という高収益企業。第1次石油危機時に創業し、生産のアウトソーシングなどの手法で生産性を上げる努力を積み重ねてきた。

 また、1984年(昭和59年)、35歳で父親から家業の衣類販売店を受け継ぎ、「日本でアパレル1位になる」という志を立て成長してきたファーストリテイリング・柳井正氏(1949年生まれ)。

 石炭の街、山口県宇部から出発し、SPA(製造小売業)の仕組みを構築。東レと組んで、厳寒期に軽くて保温性のある『ヒートテック』などの新素材を開発して、デフレ下で〝失われた30年〟と言われた日本で成長してきた。また、早くからグローバル世界に打って出て、今やカジュアル世界3位の座。柳井氏は、2位のH&Mを抜き、さらに首位ZARAを抜いて、「世界一を目指す」と挑戦を続けていく考え。

「企業は潰れるもの。潰さないようにするために企業経営者が要る」という考え方。人も企業も栄枯盛衰が付きものという歴史観である。

 危機感が同社を成長させ、『ユニクロ』を世界ブランドに押し上げたと言えよう。

 日本全体は〝失われた30年〟であったが、産業界にはこうした変革期を逞しく生き抜く企業・企業人がいる。

 日本の持つ潜在力をいかに掘り起こし、世界の投資家に発信していくか─。

 この4月、JPXCEOに就任した山道氏も、「われわれを取り巻く環境がどんどん変化している中で、CEOになって、身の引き締まる思いです」とし、「自分たちが取り組んでいること、あるいは良い変化が起こっていることをもっと積極的に内外に発信していかないといけない」と身を引き締める。

 具体的にどう動いていくか?

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