2023-06-27

フューチャー会長兼社長・金丸恭文「日本はもっとサービスを輸出できる」

金丸恭文・フューチャー会長兼社長


日本人は自分たちの可能性を否定している



 ─ 製造業以外の可能性について思うところを聞かせてください。

 金丸 日本は今まで工業製品の輸出に注力してきましたが、これからは日本各地の伝統的な工芸品や農産物、そしてサービス産業をもっと輸出すべきだと思います。

 昨年末のサッカー・ワールドカップで活躍した田中碧選手が、岩手県の伝統的工芸品「南部鉄器」を愛用していることが話題になりました。不足しがちな鉄分が効率的にとれるということで、10万円以上もする商品を特に中国の富裕層がこぞって購入しているそうです。

 また、海外では日本のフルーツは、甘くて美味しいと非常に人気です。タイやシンガポールでは、1パック1400円のイチゴが入荷と同時に売り切れると聞きます。冷凍技術が進化しているので、付加価値の高い農作物の輸出により力を入れてほしいですね。

 ─ まだまだ日本にはポテンシャルがあると。

 金丸 もちろんです。残念ながら、日本人は自分たちの可能性に気づいていないだけでなく、可能性を自己否定しているようにも感じます。

 日本はこれだけおもてなしやサービスのクオリティーが高いのに、海外のようにお客様からチップを取らないですよね。どこのレストランや居酒屋に行っても、店員さんが笑顔で迎えてくれて、料理も素早く運んでくれる。しかし、米国ではサービスの良し悪しにかかわらず、チップは食事代の2割以上払わないといけない。だから、日本に来た外国人は、感動して帰るわけです。

 だったら、会計時のレシートにチップ欄を設けて、おもてなしやサービスに感動してくれた人からサービス料をもらえばいいのではないでしょうか。1割、2割の売上アップはすぐに達成できるはずです。

 ─ こうした仕組みをつくらなかったのは、日本の国民性ですか。

 金丸 国民性というか、提供するサービスに見合った対価を得るという発想がなく、また時代のニーズに合ったサービスの仕組みをデザインしてこなかったのだと思います。

 先日、郷里の鹿児島に帰ったのですが、空港で乗ったタクシーは現金でしか支払いができませんでした。

 こうしたキャッシュレス対応の遅れは、特に地方が顕著です。海外では今やキャッシュレスが当たり前で、米国人も中国人もヨーロッパ人も、当然、現金は不要だと思っています。だから、タクシーを降りる時に支払いでトラブルになったという話をよく聞きます。

 コロナ禍の3年間で外国人観光客は激減しましたが、コロナの収束と円安が追い風となり、訪日観光客が一気に増えています。それなのにキャッシュレスに対応できないのは、大きなビジネスチャンスを逃していることと同じです。日本人は可能性を自己否定していると言ったのは、そういう意味です。

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