2023-06-27

フューチャー会長兼社長・金丸恭文「日本はもっとサービスを輸出できる」

金丸恭文・フューチャー会長兼社長

日本はなぜソフトではなくハードを追い続けるのか?



 ─ 人口減少により、ほぼ全ての産業で人手不足が顕著になっている一方で、「チャットGPT」のような生成AI(人工知能)も登場しています。これからの人とAI、人と機械の関係を含めて、日本の可能性をどのように考えていますか。

 金丸 今、政府は経済安全保障という観点から、半導体分野にもう一度挑戦しようとしています。高性能なCPU(中央演算処理装置)などのロジック半導体の製造では、日本は台湾や韓国の後塵を拝しています。そのため、日本政府はソニーグループやトヨタ自動車など、大手8社が出資した半導体の新会社、ラピダスに巨額の補助金を投じています。

 こうした動きを見ていて思うのは、日本はやはり、設計やデザインといったソフトウェアではなく、製造などのハードウェアに注力する傾向にあるということです。

 もちろん、ものづくりも重要ですし、製造業が日本の高度経済成長を支えてきましたが、米国ではインターネットの登場によって、産業構造が製造から設計やソフトウェアにシフトしました。その結果、世界の時価総額上位は米国発の巨大IT企業が占めています。

 AIビジネスが注目されている今、グローバル競争から取り残されないためにも、日本はもっとソフトウェアやデザインに関心を持つべきではないか、と思います。

 チャットGPTや生成AIについても、政府は戦略的に取り組もうとしていますが、この分野こそソフトウェアで世界と勝負しなくてはなりません。政府がコンピュータサイエンスを強化して、真剣にAI立国を目指すのであれば、まずは教育のあり方、特に大学改革に取り組むべきでしょう。

 デジタル人材の不足は、国の発展を左右する問題です。絶対的に不足している理系人材を増やすためにも、現在の理系3割・文系7割という比率を見直し、特に情報系の学部を増やしていくことが不可欠です。教育のあり方を含めた戦略の見直しと再構築に向けたロードマップの作製を政府主導で行っていただきたいと思っています。

 ─ そこは企業人が引っ張っていくことはできませんか。

 金丸 もちろん企業人も協力すべきですし、大学も、大学を所管する文部科学省も変わらないといけません。今こそ日本をどうするかというトータルなデザインが必要です。


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