そうした状況下、後発組のラピダスが巻き返しを図るための秘策は〝国際連携〟だった。
ラピダスは昨年12月、先端微細化回路の基礎研究で成果を上げている米IBMと提携。また、先端半導体に欠かせないEUV(極端紫外線)露光装置は蘭ASMLが市場を独占しているが、ラピダスは今年4月、このASMLとコンソーシアムを組むベルギーの研究機関imec(アイメック)とも提携。
ラピダスはすでに米国にあるIBMの研究開発拠点にエンジニアを派遣しており、いかに双方から技術を習得できるかが今後の成否を占いそうだ。
ただ、技術供与を受けるとはいえ、10年、20年の周回遅れという現状をたった数年で追いつくことができるのだろうか?
こうした疑問に対して、小池氏は「(TSMCなどの)後追いではなく、われわれはいきなりジャンプして、新しい技術を習得しようとしている。IBMやアイメックだけではなく、装置メーカーや材料メーカーなども全面的に支援すると言ってくれている。国際連携でラピダスをしっかり運営していく」と語る。
昨年11月の記者会見でも、会長の東哲郎氏(東京エレクトロン前会長)は「日の丸連合では勝てない。世界の技術を結集していくという観点が重要」と話しており、同社は官民だけでなく、日米欧の国際連携に勝機を見出そうとしている。
日本の半導体は1970年代から80年代にかけて世界を席巻し、80年代後半には世界シェアの約5割を占めていた。しかし、日米貿易摩擦や〝失われた30年〟を経て、日本勢は投資余力を失った。この間、韓国や台湾が力をつけ、継続的な投資が必要な半導体の世界で、今や日本は韓国・台湾勢に後塵を拝する形となった。
小池氏は日立製作所の出身。生産技術本部本部長や半導体製造子会社社長などを歴任し、2018年から米ウエスタンデジタルの日本法人社長をつとめるなど、40年以上に渡り半導体業界に身を投じてきた。日本の半導体の栄枯盛衰を間近で見てきただけに、日本の半導体復活へかける思いは強い。