2023-05-09

【産業競争力を高める!】三井不動産新社長・植田俊の「需要創造を図る産業デベロッパーとして」

植田俊・三井不動産社長




不確実性のうねりの中で

「どのエリア、どの国でも、あるルールの下で自由にビジネスできるという世界から、今は地政学的なリスクを含めて、分断の時代に変わりつつあるなと」

 そして昨今の金融波乱だ。

「2008年リーマン・ショックがきっかけで、世界中が大金融緩和を続けた。それがコロナ禍を経て、インフレが非常に高まり、それに対応するために金利引き上げが始まった。低金利時代からちょっと金利が高くなる。これも大きな時代の変革期だと思っています」

 金利高の局面を迎えて流動性の危機を招き、名門クレディ・スイスも経営危機に直面。

「そういう意味では不確実性のうねりみたいなものが来ている。1つの大きな時代の転換点かなと思っています」

 植田氏はこういう認識を示し、「個人的にはこれから社長として、どちらかというと武者震いと言いますかね。そんなことを感じている状況です」とその心中を明かす。

 緊張感の伴う環境下でどう成長していくかという経営課題。

「われわれは従来から、保有、開発、そして売却を含むマネジメントの3つのビジネスモデルを標榜しています。成長に向けての大きな投資、これは引き続きやっていくと。そうは思うものの、一部では回収したりしながら、全体のバランスシートを考えながら、戦略的にマネジメントしていくことが大事」


姿勢を低く、足腰を強くして、前に進む!

「姿勢を低くして、前に進むことが大事だと。姿勢を低くするということは、足腰を強くして前に進むことと思っています」と植田氏は基本姿勢を語る。

「今われわれは『ビジョン2025』という直近方針を打ち立ててやっておりますが、これもほぼ目途がついてきた。次なるステージとして、次の長期経営方針を立てていく考えです」

『ビジョン2025』は不動産そのものをイノベーションすることと、海外での事業を拡大、つまり国際的な展開を推進していくことが中心課題。定量的には、営業利益で3500億円程度を確保したいとしている(ちなみに、2023年3月期は売上高約2兆2000億円、営業利益約3000億円の見通し)。

 中長期の展望に立つと、不測の事態が発生した時にどう対応していくか、リスク管理を含めて、経営の持続性(サステナビリティ)を考えていかないといけない。これは、同社の『産業デベロッパー』に徹するという経営哲学とも絡んでくる。

 2007年に完成した『東京ミッドタウン』(六本木)、2018年に開業の『東京ミッドタウン日比谷』、そして今年3月開業の『東京ミッドタウン八重洲』といった〝東京ミッドタウン〟ブランドの街づくり・コミュニティづくりもそうだ。

 各東京ミッドタウンはオフィス、商業施設、住宅、ホテル・リゾート、そしてロジスティクス(物流)と、大体5つの商品を揃えているが、これからは6つ目の商品として、ラボラトリー(研究施設群)が加わる。

本誌主幹 村田博文

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