2023-03-22

「挑戦する社員には報酬で報いる」パナソニックHDが進める人事制度改革

新家伸浩・パナソニック コネクト執行役員常務CHRO


会社が個人の人生を保証することが難しくなる中で…



 日本では伝統的に終身雇用・年功序列を基本とし、実務にあたってから適職を見定めていくメンバーシップ型の雇用が一般的だった。しかし、近年は生産性の低さや専門性に欠けるなどの課題が露呈。三菱ケミカルホールディングスや日立製作所などの大企業を中心に、欧米で主流のジョブ型雇用を採用する企業が増えつつある。

 リクルートの研究機関・就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は「日本型雇用の特徴は、個人のキャリアは会社に委ねるのが普通で、会社の言う通りに働くことによって、自分のキャリアアップがある意味で担保されていた。ただ、今は日本経済がゼロ成長と言われる時代になり、会社が個人の人生を保証することが難しくなっている」と指摘。

 それだけに、個人も会社に頼るのではなく、自らキャリア設計を考え、専門領域できちんとキャリアを磨き上げる必要があるという。その上で、栗田氏は「ジョブ型、メンバーシップ型どちらがいいという話ではなく、会社自体が多様な選択肢を用意してあげて、多様な価値観を持つ個人が働きやすいルールづくりが必要だと思う」と語る。

 パナソニックHDは、日本の大企業で初めて週休2日制を導入したことでも知られる。創業者の松下幸之助氏が1965年(昭和40年)に海外の事例を参考に導入したもので、今ではスタンダードな働き方となった。

 国内外で約24万人が働くパナソニックグループ。今回のパナソニック コネクトの取り組みは、あくまで子会社1社の事例であるが、グループ全体の働き方改革の試金石とも言える。明確な成果が出れば、将来的には全社的な導入にも発展するかもしれない。

「社員が自らキャリアを描き、学習して、挑戦する〝ラーニングカルチャー〟の醸成が大事。われわれも社員に対して、様々な学びの場を提供し、社員がチャレンジして成果を上げていくという好循環を生み出せるようにしていく」と語る新家氏。

 ジョブ型の導入は、日本の伝統的な雇用制度を見直す一つの契機と言っていい。時代や社会が大きく変わっていく中で、雇用システムの変革がパナソニックという伝統的な企業の変革を後押しすることはできるか。

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