「人を育てる、人は自ら育つ」の両方が必要
混乱・混迷の時代にあって、先行き不透明な世の中を生き抜くには、人を育てるということと、人は自ら育つという両方が必要─―。
「人への投資」を最重要課題の一つに掲げる岸田政権。
その中の一つが、リスキリング(学び直し)。DX(デジタルトランスフォーメーション)などの専門的な知識や英会話などの語学などを学ぶことで、個人の能力を底上げし、組織全体を高めようという試みだ。
また、生産性向上という観点で経団連や岸田首相が推進しているのが、職務内容に合わせて給与を設定し、人材を採用する「ジョブ型」雇用への移行。
日本では長く終身雇用・年功序列を基本とする「メンバーシップ型」雇用が中心だった。しかし、新卒一括採用で万能型の人材を育成するメンバーシップ型では専門的なスキルを持った人材が育ちにくい。
このため、近年は日本でもジョブ型を導入する企業が増加。三菱ケミカルホールディングスや日立製作所、KDDI、富士通、NECといった企業がすでにジョブ型を導入、もしくは全面導入しようとしている。
AGC会長の島村琢哉氏は「人を育てていく」という日本的風土を維持しながらも、「ポジションによって待遇、報酬を変える『日本型ジョブ型制度』も一つの道」と話している。
リクルートの研究機関・就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は「ジョブ型など、採用手法を多様な形で行っていくことで、少しでも優秀な人材を獲得しようという企業が増えつつある」と指摘。ただ、「どちらがいいという話ではなく、会社自体が多様な選択肢を用意し、多様な価値観を持つ個人が働きやすいルールづくりが必要だ」と語る。
コロナ禍で人々の生き方や働き方がガラリと変わった。企業各社に共通しているのは、賃金体系にしろ、働き方にしろ、旧来の日本型雇用システムでは時代の変化に対応できないという危機感だ。
今は人への投資で差がつく時代と言っていい。