アジア展開が「第2ステージ」に
企業として成長していくためには、海外展開も欠かせない。MUFGはアジアを「第2のホームマーケット」と見定めて、投資を進めている。すでにタイのアユタヤ銀行、インドネシアのバンクダナモンなど、現地の銀行とのグループ連携も深まっている。
22年11月にはアユタヤ銀行を通じて、蘭ホームクレジット社のフィリピン、インドネシアで個人向けローンを展開しているノンバンク事業買収を決めた。投資額は約870億円。
これはアジアにおいて、商業銀行事業だけでは取り込めない層の獲得を狙っての買収。ホームクレジットは家電などの耐久消費財を購入する際の割賦ローンを提供している。
このローンを利用する人達の中には銀行口座を持っていない人も多い。今回の買収で、これまで以上に顧客層を広げることができる。
「アジアの成長を全て捉えるために、『面』で抑えるという戦略」と亀澤氏は説明する。しかも、この買収は「アユタヤ銀行なしにはできなかった」という。
アユタヤ銀行のチームが主たる役割を果たし、MUFGとも連携しながら、ホームクレジットの価値評価をして買収を決めた。アユタヤ銀行がアジアでの買収の「プラットフォーム」としての役割を果たしたのだ。このことを亀澤氏は「ある意味で第2フェーズに入った」と評価する。
もう一つ、海外戦略で重要なのが米国。21年9月には米国の主力銀行であるMUFGユニオンバンクの個人向け事業・中小企業向け融資を米地銀最大手のUSバンコープに売却することを決め、同社と提携を結んだ。
米国事業は縮小することになるが、亀澤氏は米国事業の約7割がMUFGに残ることから「アセットを集中して、ホールセール(法人向け事業)中心のビジネスをやっていく」と強調。
米国では持ち分法適用会社である大手投資銀行・モルガン・スタンレーとの提携も活用していく。「皆さん、我々がモルガン・スタンレーからの収益を、ただもらっているという理解をされがちだが、我々は欧米の投資銀行ビジネスを彼らにやってもらっているという判断」
MUFGとモルガン・スタンレーは「LMJV」(Loan Marketing Joint Venture)を形成し、モルガン・スタンレーが投資銀行業務を担って手数料を得るとともに、MUFGが融資を担って、出資分の配当を得るという役割分担。
MUFGユニオンバンク、モルガン・スタンレーとの提携にヒト・モノ・カネを投じて、米国でのホールセール強化を進めていく考え。
これからのMUFGにとっては、前述のパーパス「世界が進むチカラになる。」が基本軸になる。「それに合わせて必要なことをやり、違ったと思えば変えればいい」と亀澤氏。
この姿勢で、時代の変化に対応できるかが、将来に向けての鍵を握っている。