2023-01-17

 再考・日本の安全保障戦略(1回目) 元防衛大臣・森本敏

森本 敏 元防衛大臣



 ─ 非民主主義体制国の方が多いという事実は冷静に見ておく必要がありますね。

 森本 はい。こうした現状に鑑みて、グローバルウエストでは世界をリードして国際秩序を再生するにあたり、民主主義という価値観をもとにするより、法秩序や諸原則あるいは、国としての振る舞い方を規範とする新たな概念を引き出すことができないかという議論も起こっています。

 また、国連安保理決議が常任理事国の拒否権によって機能しない現実をどのようにして改善し、国連の機能回復を図るべきかという問題も改めて議論されています。

 ─ そうなると、2023年における国際社会は安定に向かうと考えていいですか。

 森本 2023年は多くの問題を2022年から引きずるでしょう。そして、国際社会における次の大きな政治的転換期は、2024年にくることになることが予想されます。2024年末までに、台湾の総統選挙、インド、トルコ、ロシア、ウクライナ、欧州議会、米国の大統領選挙などがあり、2023年はこうした政治の節目に向けた主要国の動きが顕著になるからです。

 欧州では言うまでもなく、ウクライナ戦争の行方とロシアの国内変動に大きな関心が集まります。フィンランド・スウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟、プーチン政権の行方とロシアの内政、ウクライナや欧州諸国のエネルギー問題、ウクライナ問題をめぐる和平協議再開に向けた動き、核兵器の使用や抑止の意味など当面する課題は多く、引き続き欧情勢の変化には注目を要します。

 中東湾岸はサウジアラビアが従来からの緊密な関係にある米国と距離を置くようになり、ロシア、中国と接近するような状態に動く中で、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」の動向やイランと米国の関係が冷え込んでいることがエネルギー問題のみならず、米欧諸国の中東湾岸政策に大きな影響を与えています。

 また、このことはイスラエルの動きにも、どのような影響を与えるかが注目されます。

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