2023-01-01

社員を〝シェア〟して中小企業の課題を解決 【ユナイトアンドグロウ】の新・雇用戦略

須田騎一朗 ユナイトアンドグロウ社長

新たな働き方「あなたの会社でうちの社員が自律的に働きます」

産業の裾野を支える中小企業の共通の悩みの1つがデジタル化。大企業と違い、優秀なIT人材を集めることも育てることも難しい。そんな中、ITに精通する自社の社員を顧客企業に出向かせて、社内情報システムの整備などを手掛けているのが東証グロース上場のユナイトアンドグロウだ。「当社の社員が自律的に動いて課題を解決する」と語る社長の須田騎一朗氏。人を〝シェア〟する新たな雇用戦略とは。

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派遣とは違う新しい働き方

「スタートアップや上場準備中のベンチャー企業を含めて、中小企業の社内情報システム部門の人材は圧倒的に足りていない。そんな悩みを抱える企業を助けるため、当社のITスキルを持った社員が出向き、要望を聞きながら自ら課題を見つけ出し、その解決策を講じる。それが〝シェアード社員〟だ」─。こう語るのはユナイトアンドグロウ(UG)社長の須田騎一朗氏だ。 

 以前から世界中でデジタル化が加速し、その流れは日本にも迫っていたが、コロナ禍でそのスピードは急速に早まっている。そんな中で各企業が高い報酬や好待遇で集めているのが「IT人材」。ただ、中小企業にとっては、これがなかなか難しい。IT人材自体の数も少なく、経済産業省によれば2030年には最大で79万人が不足するという。 

 UGは中堅・中小企業の社内情報システム部門の業務を受託するIT企業だが、最大の特長は豊富なIT技術や知識、そして経営知識も持った自社の社員を時間貸ししているという点だ。いわゆるUGの社員を顧客企業が〝シェア〟するわけだ。 

 須田氏は「当社の社員には仕事のスタイルや成果の定義はない。顧客企業に出向いて何をするかも決まっていない。顧客企業の社内ITを整備して生産性や業績を向上させるために何が必要かを自分で考えて自律的に動き出す」と話す。既に同社はシェアード社員を約200人抱えており、その規模は最大級だ。 

 いわゆる「派遣」とは何が違うのか─。派遣契約は労働者を派遣先企業の業務に就業させることを目的とした契約となり、業務における完成責任は負わず、労働者は仕事の指揮命令を派遣元の企業からではなく、派遣先から受けることになる。 

 一方、UGは顧客企業と「準委任契約」を結ぶ。もしこれが「委任契約」であれば弁護士や会計士といった法律行為がある場合を指すが、業務が法律行為以外となれば「準」がつく。準委任契約は顧客企業の悩み事を解決するといった特定の業務を遂行することを目的とする。 

 そのため、「顧客企業が当社の社員に仕事の指揮命令はできない。その代わり、当社に籍を置くシェアード社員が顧客企業に出向いて社長や社員の要望を汲み取り、中立的な立場で改善策を実行していく」(同) 

 UGでは担当する企業や仕事内容は立候補で決めており、1つの企業を数人のチームで担当することもある。1社員平均で3~4社を担当。売れっ子の社員は5~6社を掛け持っているという。須田氏は「言われたことをやるだけでは評価されないし、問題も解決しない。シェアード社員はそれ以上の価値を提供しなければならない」と強調する。 

 顧客企業からすればメリットは多数ある。派遣に比べて期間の制限がなく、人数の制限もない。何よりも自社で採用リスクを抱える必要がなくなる。そもそもIT人材を募集する必要がない上に、採用できても定着するかどうかはまた別の問題だ。 

 しかし、シェアード社員の場合は、採用のリスクはUGがとり、その代わりに「当社の社員を出向かせてもらっている」(同)形になる。しかも、単なる数合わせでなく、同じような規模の中小企業の社内システムの構築を手掛けた経験のあるUGの社員が出向いてくる。 

 シェアード社員に求められる顧客企業からの要望は様々。今では社内システムは売上管理や内部統制の管理、コンプライアンスの強化に必須だ。「これまで紙と会話でやりとりしていた数値管理をデータ化して社内で共有できるようにすれば、営業部門と顧客との会話から製造部門も次にどのような製品が求められるかが予測でき、先回りして素材を仕入れておくこともできる」と須田氏は話す。


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