2022-11-10

「井の中の蛙では生き残れない!」 電動化に直面する【ホンダ・三部敏宏】の一喝

三部敏宏 ホンダ社長



量産EVとは一線を画す

 別の関係者によると、新会社にはホンダのみならず、日産自動車やSUBARUといった他メーカーの技術者が転籍しているという。そういった他社の知見に加えて、ソニーが持つパートナーやクリエイターとの関係やノウハウを取り入れることによって「垂直(統合)と水平(分業)のビジネスモデルが混ざる形」(水野氏)を見込む。

 販売形態も変える。現行の自動車ディーラーによるリアルな店舗での販売ではなく、米EV大手のテスラのように店舗網を持たないオンラインが中心となる。そのため、車両メンテナンスを担うサービスショップなどの展開も検討する。

 この新会社はホンダの40年に世界販売の100%をEVとFCV(燃料電池車)にする電動化目標とは「全く別物」(関係者)となる。新会社のEVは量産することで利益を出す自動車メーカーのEV戦略とは一線を画す形。エンタメの強みを打ち出しながらスマートフォンのようにソフト更新で稼ぐクルマが新会社のEVとなるわけだ。

 ただ、新会社のEVが登場するのは3年後。テスラは直近の3年間でEVの世界販売台数を36・7万台(19年)から93・6万台(21年)にまで伸ばした。足元ではBYDなどの中国のEVもシェアを伸ばし、台湾の鴻海精密工業がEVの受託生産に乗り出し、中国ネット大手のアリババ集団も高級EV開発会社を立ち上げ。さらには米アップルによるEV参入も依然として取り沙汰されている。

 そんな中、ホンダは前社長の八郷隆弘氏が〝聖域〟と呼ばれていた研究開発子会社を中心に開発体制を再編。工場の閉鎖や派生車種の削減をし、F1からも撤退するなど構造改革に取り組んだ。一時は1%台に沈んでいた営業利益率を2%台へと向上させるための地ならしをして三部氏にバトンを渡した。

 そして三部体制になって「独立路線」を歩んできたホンダは米GMや米グーグルなど提携戦略を次々と打ち出している。ソニーとの新会社設立でも一部のOBからは確かに「ソニーの下請けになってしまった」という声も聞かれたが、「多様性を推進しないという選択肢はない」と覚悟を示す三部氏。

 ホンダは身を削ってでも進路を切り拓かないと生き残れないという緊張感の真っ只中にいる。それだけに、電動化という荒波を漕ぎ抜けることができるかどうか。新会社がその命運を握っている。

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