2022-08-05

食やエネルギーを含む、日本の安全保障をどう確保? 答える人 元農林水産大臣・齋藤健




ロシア同様に中国が台湾を電撃侵攻したらどうなるか



 ―― そう考えると、中国との関係は大事ですね。

 齋藤 それは大事です。わたしは、今回のロシアによるウクライナ侵略は、日中関係を考える際にも、極めて重要な問題だと考えています。遠くのヨーロッパで大変なことが起こりましたね、で済まされる問題ではない。

 懸念されるのは台湾への跳ね返りです。当初、露プーチン大統領が目論んでいたことは、ウクライナの首都キーウを電撃侵攻して、ゼレンスキー大統領を失脚させ、ウクライナ全体を掌握することでした。ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟するなんてとんでもないと。ところが、当初の目論見が外れたので、東部の制圧に切り換えたわけですね。

 中国による台湾侵攻のシナリオはいくつか考えられますが、一つの有力なシナリオが電撃侵攻なんです。中国が台湾の総統府を制圧した後で「これは中国の国内問題です」と言われたら、どうなるか。日本も米国も“一つの中国”を尊重すると言ってきているんですよ。

 ―― 中国は、本当に台湾に手を出すのでしょうか。

 齋藤 今回、プーチン大統領が考えていたことは、中国の習近平国家主席が考えているであろうことと共通性があるんです。

 昨年7月に中国共産党の創立100年周年式典が行われた時に、習近平国家主席は台湾を統一するという趣旨の発言を行っています。わたしは中国は本気だと思います。

 そして、一つのシナリオとして、電撃侵攻というものがあるのであれば、それは今、ウクライナで行われているではないか。このことを日本人も念頭に入れておくべきです。

 かつてウクライナはソ連の一部でしたが、実は、9世紀から13世紀にかけて、現在のロシアとベラルーシ、ウクライナの地域は、キエフ大公国という一つの国でした。しかも、当時ヨーロッパ最大の。

 ―― かつてウクライナとロシアは一体だったと。

 齋藤 そうです。なので、プーチン大統領から見れば、冷戦に敗れることによってウクライナが奪われた、という感覚があってもおかしくない。

 実は中国にとっての台湾も同じです。習近平国家主席から見ると、もともと同じ国だったが、日清戦争に敗れて奪われたのが台湾なんです。こうしてみてくると、ロシアとウクライナの関係は、中国と台湾の関係に似ている。だからこそ、ウクライナ問題は明日の台湾問題かもしれないと言ってもいいのではないかと思います。

続きは本誌で

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