インフレか、リセッションか
リスクとして懸念しているのは米国のインフレです。FRB(米連邦準備制度理事会)は次回も金利を0.75%引き上げるかもしれませんが、多少金利を上げても、米国経済は完全なバブルですから、簡単には収まらないと思います。
過去、日本では日本銀行がバブルを抑えるために、急速な利上げ、過度な金融引き締めを行ったことで、日本経済は1990年にバブル経済がピークアウトして、その後株価は大暴落しました。
そして1ドル75円という超円高で日本の大企業は大打撃を受けました。その後、「失われた20年」、「失われた30年」、デフレ大不況がやってきました。その意味で米国経済は今、非常に危うい状況にあると見ています。
FRBはインフレか、リセッションかという選択を迫られています。インフレを抑えるためには今後さらに利上げ、金融引き締めをしなければなりませんが、それをやり過ぎると「オーバーキル」になってリセッションになってしまいます。
リセッションを回避したいがために、金融引き締めを穏やかにやるとインフレは収まりません。ですから非常に難しいカジ取りで、かつての日銀のような強烈な金融引き締めと利上げの方向に行くのか、オーバーキル回避のために、外科的治療ではなく漢方的治療を選ぶのか。ただ、この場合にはインフレは高止まりするでしょう。
もう一つの難題は、インフレを抑えると同時に景気を悪化させないようにしなければならないということです。そして、状況がどちらに転んでも、中間選挙に向けては民主党にとって不利です。ガソリン代や食料価格が上昇し、国民は不満を持っていますが、それを抑えるために強烈な金融引き締めをすると景気後退(リセッション)、不況になってしまいます。
兆しは、すでに住宅ローンに出ています。ローン金利が跳ね上がり、今後住宅市場が冷え込む恐れが出てきているのです。6月下旬から11月の中間選挙に向けて、FRBは綱渡り的な政策を強いられることになります。
一方、バイデン政権はウクライナ支援という難しい外交政策に直面しています。一歩間違えればロシアと対決することになりかねません。まさに民主党、バイデン政権は「内憂外患」という状況です。ですから米国株は一時的に下げ過ぎの反動高はあっても、どこかでさらに大きく下げる局面がやってくるのではないかと見ています。
ただ、その時でも日本株は下げ渋るでしょう。今後は、米国株は大波乱、「波高し」の状況の一方、日本株は「底入れ近し」というのが、今の私の相場見通しです。