2022-02-01

コロナ禍で変わる旅行ビジネス JTBが進める「地域ソリューション事業」

沖縄県の「美ら海水族館」



いかに公式サイトへ誘客できるか?

 その際にポイントになるのが公式サイトへの誘客だ。今では旅先で観光地のサイトを検索し、そこで見つけた観光事業者や観光協会の公式サイトから施設の入場券を購入したり、アクティビティ(体験)を予約したりするのが主流。「旅行会社のサイトを経由せずに公式サイトで予約・決済してもらえば、自治体や観光事業者の収入は増える」(同)ことになる。

 宮崎・熊本・大分3県の県境の近くに位置する全長約1・7キロの渓谷・高千穂峡。コロナ前はインバウンド客で溢れ、2~4時間待ちは当たり前だった。密を避ける安全・安心の確保が課題となったとき、地元の自治体や観光事業者が時間帯での分散化を図ろうとしても、ノウハウやコストの面で限界がある。

 そこでJTBが移動や食事、体験の情報・予約・決済・問い合わせなどがワンストップで可能となるサービス群「ツーリズム・プラットフォームサービス」からシステムを提供。今では公式サイトから日時指定と決済などができるようになった。

 同サービスは日本国内の提携パートナー企業に加え、世界の大手オンライン旅行会社の一角をなすトリップアドバイザーグループの「Bókun(ボークン)」とも連携。「インバウンドのお客様も公式サイトで集客できる」(森口氏)。

 既に全国1700施設で、そのサービスが導入されているパートナー企業もあり、現在進行形でプラットフォーム機能の充実を図っている。これらのサービス(各システム)の利用料をJTBが収入として得る。

 森口氏は「地域の観光施設は点在しており、規模もさまざま。予約・発券・決済などを一元管理すると共に、〝点〟で散らばる観光施設同士をデジタルでつないで〝面〟とすることで、お客様にその地域に長く滞在してもらえる」と話す。その際、JTBは裏方に回るが、同事業には約1500人(グループ全体で約2・1万人)を当てる。

 自治体に税収をもたらすのは「ふるさと納税」も同じだ。コシヒカリの産地・南魚沼市やうなぎで有名な鹿児島県大崎町などのふるさと納税の仕組みも同社が担っている。「ふるさと納税で、地域とつながる関係人口を増やすことができる」(同)。

 47都道府県に拠点を持ち、行政や観光事業者ともネットワークを持つ強みを生かして、これまでは地方に旅行者をいかに多く送客できるかに主眼を置いていたJTB。だがこれからは地域への「誘客」に力を入れる。コロナを経て、経営環境が大きく変わり、ビジネスモデル転換の必要性が増している。

 日本の観光業の復活には地方の観光地の復活は欠かせない。日本人の人流を活性化させることはもちろん、ポスト・コロナでは「インバウンドの爆発的な復活も起こり得る」(同)。それまでに地方の税収を増やして地域の活性化につなげられるか。JTBの本気度が問われる。

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