2022-01-31

東大の『知』をどう生かす? 藤井 輝夫・東京大学総長に聞く!



世界の誰もが来たくなる大学に



 

 ―― では、大学が組織や人とつながっていくために必要なことは何なのか。

 藤井 多様性をしっかりと受け入れることが大事です。多様な人間が集まり、対話をおこなうことで、学問のレベルにおいてもより高いものが得られます。社会課題を解決する方策を考える際も、より多様な視点で議論したほうが、共感性の高いソリューションが得られるだろうと思います。

 同質的な集団だけで議論していても、なかなか良い解決策は見つかりません。その意味でも、多様性は重要です。

 そこで、「世界の誰もが来たくなる大学」を目指すと宣言しています。大学という場を、学内外問わずより多様な人々が集う場にしたいのです。各々が伸び伸びと活動していく場として大学に集い、そこで自分たちのやりたいことを実現していく。そういった場にしたいと考えています。

 ―― 最近は経済安全保障という言葉が出てきたり、自国第一主義を掲げる国が出てきたりして、分断が進んでいるという声もありますが、逆に言えば、そういう時代だからこそ、大学の「つなぐ」という役割が重要になってきますね。

 藤井 それはあると思います。大学をはじめとするアカデミアには、それぞれの国の様々な事情を越えて、世界的な結びつきがあります。分断が進んだ時代だからこそ、アカデミアのネットワークは重要な存在になるのかもしれません。

 カーボンニュートラルの問題にしても、コロナの問題にしても、それぞれの国々でアプローチの方法は違うわけです。大学は先進国にも途上国にもあり、学知を世界共通にきちんと共有できる存在です。

 アカデミアの結びつきを生かし、知を共有して、人類が直面する共通の課題に真摯に向き合い、対話を重ねることで、相互の理解と信頼を築いていく。この対話と信頼の相互連環こそが、新たな未来を拓くと信じています。

 大学の果たす役割は今後もっと大きなものになっていくと考えています。

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