2021-11-08

【政界】総裁選、衆院選で変化した自民党内の力学 岸田首相に“意外としたたか”との評価も

イラスト・山田紳



目玉政策先送り?

 岸田が選挙を急いだのは、「ご祝儀相場」の皮算用はもちろんのこと、数十兆円規模の経済対策をまとめ、それを反映した21
年度補正予算案を年内に成立させるには、11月7日投開票では間に合わないと判断したからだ。

 岸田は看板政策の「新しい資本主義実現会議」を衆院選前に立ち上げた。民間有識者には「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の玄孫、渋沢健らを起用し、岸田カラーを出している。ただ、本格的な議論はこれからだ。同会議は安倍内閣の未来投資会議、菅内閣の成長戦略会議を継承した形になっており、単なる看板の掛け替えに終わらせない工夫が求められる。

 一方、総裁選で「分配」政策の一例に挙げた金融所得課税の強化について、岸田は10月10日のフジテレビの番組で「当面は触ることは考えていない」と先送りを表明した。「関係者に余計な不安を与える」からだという。日経平均株価は総裁選中の9月27日から10月6日まで8営業日連続で下落し、市場の一部には「岸田ショック」との見方が出ていた。

 安全保障分野では、安倍が退任直前に提起した「敵基地攻撃能力」の保有について、岸田は検討に前向きな発言を繰り返してきた。国家安全保障戦略の改定時に盛り込むかどうかが焦点だが、専守防衛の転換につながりかねず、公明党は慎重姿勢を崩していない。冬の新型コロナの第6波に備えた医療体制の整備も重要なテーマだ。

 岸田は今回の衆院選を「未来選択選挙」と強調してきた。山積する内政、外交の課題にトップリーダーが腰を据えて取り組まなければ、日本の未来はたちまち漂流する。 (敬称略)

【政界】「新しい資本主義」に向けた具体策とは?岸田首相の真価問われる衆院選

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