2024-04-26

オイルシール世界首位・NOKの「異なる部材をくっつける!」“技術掛け合わせ”戦略

鶴正雄・NOK社長CEOと新企業ロゴ



EVでも応用できる技術とは?

 しかし、鶴氏は次のように生き残り策を強調する。「当社の技術のコアは界面制御(コントロール)の技術。異なる部材同士を〝くっつける〟技術はEVで使われるモーターや電池など数多ある。しかも、当社の顧客は日系メーカーがほとんど。海外の新興EVなどが今後の新規開拓先になる」

 界面とは、混じらずに接触している2つの物質の境界を指す。NOKはこの境界を分析したり、制御したりする技術を発展させてシール製品やフレキシブルプリント基板をつくってきた歴史を持つ。そのため、EVに搭載されるモーターやインバーター(逆変換装置)、電池などでは高い放熱性に対応したシール需要が見込める。

 すでに同社はEV向けのシール開発を進めつつも、EVの車載電池用樹脂ガスケット(シール材)を手掛ける子会社のエストーの北米展開やEV電池の電圧監視用フレキシブルプリント基板のメキシコ拠点にも投資。EV関連の新製品や水素関連の研究開発投資も進める考えだ。

 鶴氏は高度成長の初期に社長などを務め、日本自動車部品工業会会長も務めた中興の祖・鶴正吾氏の言葉を胸に秘める。「一本足では会社は潰れる」─。この危機感を抱いた正吾氏は当時、世界でも進んだ密封技術を持っていた西ドイツ(当時)のカール・フロイデンベルグ社と資本提携し、技術の向上を実現。そして、自動車のみならず、エレクトロニクスや原子力といった事業領域の拡大を進めた。

 この思想を受け継ぎつつ、鶴氏は環境という側面からも自社製品の可能性を感じている。「主力のシール製品は環境汚染物質の漏出を防ぐという特性を持っているため、製品自体が環境保護に貢献できる」からだ。東海の工場では100%再生エネルギー化が進んでいる。

 このほど同社は新企業ロゴを含めた新コーポレート・アイデンティティ(CI)を発表した。「様々なグループ会社が設立されたが、各社が独自のCIを使用している現状に課題を感じていた」(同)からだ。クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏の支援を受けて刷新した新CIの下で、グループ内の技術を掛け合わせた新たな製品やソリューションを提供できるか。同社の技術力が試される。

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