2024-04-17

ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正「人間とは何か? 生きるとは何か? という本質的なことを勉強しない限り成果は出ない」

柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長

軍事安全保障だけでなく経済安全保障をもっと考えて


 ─ 日経平均株価が史上最高値をつけ、日銀はマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決めたわけですが、今の日本の現状をどのように受け止めていますか。

【株価はどう動く?】日銀の金融政策変更を睨んで株価は調整、4月から新たな上昇局面か?

 柳井 わたしは2012年に『現実を視よ』という本を書きました。今の日本はあの通りか、それ以上に悪くなっています。

 完全に中国に追い抜かれ、そのうちインドにも追い抜かれるだろうと。こんなことでいいのでしょうか? 日本は先進国から発展途上国を通り越して、衰退国のようになっていて、欧州の一部の国々のように、「昔の時代は良かった」と懐かしむような状態になっています。

 ─ 世界の一人当たりGDP(国内総生産)ランキングで、日本は34位まで落ちました。

 柳井 最悪ですよ。日本はこの30年成長していないのですから。

 そのあたりのことをきちんと理解しなければならないですし、日本は軍事安全保障を考えるのもいいですけど、経済安全保障をもっと考えていかなければならないと思います。

 ─ もっと日本人一人ひとりの踏ん張りが大事だということですね。

 柳井 第2次世界大戦で日本人がどれだけ亡くなったのか考えてください。世界規模で考えたら、何千万人が亡くなったわけです。ウクライナやガザの状況を見ていると、そういうことが今にも起こりそうな状態に陥っています。

 国際関係の報道を見ていても、台湾有事だと危機をあおっていますが、誰も戦争に行きたい人などいませんからね。台湾有事と言うのであれば、もっと中国とパイプを持ってきっちりと話をしないとダメだと思いますが、それなのに実際に行こうとする人は少ないですよね。

 ─ 中国といえば、柳井さんは、スタート当初から中国や華僑との一体感を持ってやってきましたね。

 柳井 はい。やはり、これからも中国は発展すると思っていますし、われわれはグレーターチャイナを最重要マーケットの一つと位置づけて事業を行っています。世界の中の中国ととらえて考えることが大切だと思います。

 ─ これは政治家にも、経済人にも気概がほしいですね。

 柳井 そうした気概を持った方々は少ないし、海外に行くのもたいてい集団で行くでしょう。でも、集団で行ってもほとんど何も変わらないと思います。

 アメリカの経済人を見てください。ビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者)やジェフ・ベゾス(アマゾン共同創業者)が寄付を行ったりすれば、自分たちで行って、個人で動いている。しかし、日本はなかなか個人の顔が見えない。そこが一番の問題ですよね。

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