トラック運転手の時間外労働に上限規制を適用させる「物流の2024年問題」が間近に迫る。運賃を上げて賃金を上げることはもちろんのことだが、現場でも様々な工夫を凝らして負担軽減に努める。キーワードは自社の経営資源の〝共有化〟だ。異業種による様々な企業が関東と関西の中継拠点の設置や物流施設版の置き配など、新たな知恵を捻り出している。
日本郵政・再生への道筋は?社長・増田寛也が抱える課題35%の荷物が運べなくなる未来「まだ、こんなアナログの現場が存在するのか……」
物流業界など向けに人材派遣を手掛ける人材サービス会社の副社長は取引先である地方の運送会社の現場を見て目を見張った。いまだに荷物の段ボールに張り付けられたバーコードを見ながら、手書きでその番号を伝票に記載していたからだ。
現場の効率化を図るため、同社は対象物を見るだけで顔認証やQRコードのスキャン、データ転送などができるARグラスを開発。他にも搬送ロボットや派遣スタッフを大量に採用するシステムを提供することで生産性を向上させた。新たに人材を雇用することなく、数百万円の投資で作業効率を3倍高めた。
その副社長は「設備を改修するには何十億円もかかってしまう。多重下請け構造の物流業界で小さな運送会社が大規模な投資はできない」と背景を語る。グループで売上高が1000億円を超える同社が運送会社に代わってスマート機器などの仕入れ・開発を行い、安価に提供しているのだ。
2030年には全国で35%の荷物が運べなくなる─。4月から自動車運転業務の時間外労働の規制が強化されることを受け、野村総合研究所はこんな推計を公表した。4月からトラック運転手の時間外労働時間の上限が「年間960時間」に制限されることで、単純計算で1日当たりの時間外労働は4時間までとなる。また、人手も足りず、NX総合研究所は25年度で14万人の運転手不足を挙げる。
しかしながら、運ぶ荷物は増えている。ネット通販の拡大により、22年度の宅配便取扱個数は50億600万個と前年度比で5000万個ほど増加。運転手を増やすためには運賃を上げ、約480万円という大型・長距離トラック運転手の平均年収を上げることが避けられない。
一方で、様々な企業がトラック運転手の負担軽減に向けた、あの手この手の方策を繰り出している。その1つが〝中継拠点づくり〟。18年に中日本高速道路と遠州トラックは東京―中部・関西を結ぶ大動脈となっている新東名高速道路の浜松サービスエリア(静岡県)に隣接するスペースに「コネクトエリア浜松」という中継物流拠点を設置した。