2024-05-02

ヒューリック会長・西浦三郎の「他とは違う事を考え抜く!」

西浦三郎・ヒューリック会長

「銀座に高級な高齢者施設をつくる」─。不動産開発で一味違う路線で成長してきたヒューリック会長・西浦三郎氏はまた新たな構想を打ち上げる。日本の長期的課題である人口減少、少子化・高齢化の中で、どう成長軌道を築くかということ。日本銀行の金融政策変更の中、株価は日経平均で4万円台を付け、賃金引き上げもあり、企業の業績は好調だが、いずれは株式市場でも、「勝ち組、負け組という選別で銘柄が選ばれる時が来る」と西浦氏。人手不足はすでに深刻化し、介護、ドライバー、建設、さらには医療分野で悲鳴があがる。不動産業界にあって、三井不動産や三菱地所、住友不動産など大手とは文字通り、一味違う経営手法で成長し、存在感を示してきたヒューリック。「場所の良し悪しとか、何か特徴がないと生きていけない」と独自の生き方を堅持しつつ、危機管理の要諦に「耐震問題、富士山噴火対応、そして人口減に伴うポートフォリオづくり」の3つを掲げる。高級介護施設や、教育サービスに特化した『こどもでぱーと』など、時代の変化に対応した新事業の構築とは─。


株価は今、好調だが企業の業績は二極化が…

 新型コロナウイルス感染症は昨年5月にインフルエンザ並みの第5類に移行し、インバウンド(訪日観光客)も急拡大。企業業績も好調で、株価は3月上旬、日経平均終値が史上初の4万円台超を付け、日本経済は今のところ順調に推移している。

 賃上げも、全体で前年比5%のアップで、好業績の企業は10数%アップで優秀な人材を確保するといった前向きな姿勢が目立つ。

 ヒューリックは不動産業界で近年、急成長してきた会社。みずほ銀行副頭取を務めていた西浦三郎氏が2006年社長に就任してから、都心の〝駅から3、4分〟の好立地にオフィスを展開し、『見上げれば、そこに。ヒューリック』といったキャッチコピーで成長。

 最近はホテル・高級旅館経営にも着手。さらに、成田国際空港近隣に大型物流施設(約13.6万坪=約44.8ヘクタール)づくりに乗り出し、都内では大型商業施設を取得するなど、新領域開拓にも積極的だ。

 また海外では、成長著しいベトナムで、イチゴや野菜づくりを手がけるなど、ユニークな事業を開拓している。

 不動産業界では、御三家とされる三井不動産、三菱地所、住友不動産の存在感が大きいが、西浦氏はヒューリック経営を担って以来、「大手と同じ事はできないし、また真似事をやっていたのでは、われわれは生き残れない」として、独自の生き方を模索し、実行してきた。

 3月中旬時点での株価時価総額を見ると、三井不動産(4兆435億円)、三菱地所(3兆3304億円)、住友不動産(2兆1957億円)に次いで、ヒューリックは1兆1626億円を付け、業界4位のポジション。

〝先輩格〟の東急不動産HD(時価総額7730億円)、野村不動産HD(同約7015億円)や東京建物(同約4538億円)を上回る時価総額である。

「他とは違う事を」という独自の経営戦略を打ち出してきた西浦氏は、日本経済の現状、そして先行きをどう見ているのか。

「株価に表れている通り、日本の企業業績はいいということですが、これから全部が上がっていくのかというと、必ずしもそうならないのではないか。一時的にはそういう傾向が出るかもしれないが、どこかでやはり銘柄が選ばれるんだと思います」

 グローバル世界を見ても、米中対立があり、ロシアによるウクライナ侵攻はまだ続く。イスラエルとイスラム軍事組織ハマスとの戦いも、停止する兆しはまだ見えない。

 肝腎の米国内は、もしトランプ氏が大統領に再選されれば、内向き政策でウクライナ問題やNATO(北大西洋条約機構)の結束にもマイナス影響が出ると予測され、波乱含み。中国自体も不動産不況や若者の失業問題など多くの課題を抱えている。

 日本国内はどうか?

 日本の場合は、人口減少、少子化・高齢化に伴って、さまざまなヒズミが出始めている。人手不足は各産業界で、成長制約要因として重くのしかかり、産業構造の変化を促している。

 それは、業績の明暗を分ける二極化という形で現れている。

「よく、勝ち組、負け組という言い方をしましたけれども、もう何社しか生き残れない時代が来るのではないかと思うんですね」

 日本銀行の金利政策変更で、そうした現象も促進されそうだ。

本誌主幹 村田博文

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