2024-02-17

【著者に聞く】『グローバルインフレーションの深層』BNPパリバ証券 チーフエコノミスト・河野龍太郎

『グローバルインフレーションの深層』河野 龍太郎 著 慶應義塾大学出版会 定価1760円(税込)

専門家ほど見通しを誤ることもある、日本は同じ失敗をしないよう…




 2021年以降のグローバルインフレ(世界的インフレ)の影響で、日本でも22年春から、2%を超える高めのインフレが続いています。日銀や民間エコノミストは、「物価は上がらないというノルム(社会規範)に日本人は囚われているから、インフレは簡単には上がらない」と説明してきました。実は専門家こそがゼロインフレノルムに囚われていたわけです。

 欧米の研究でも、今回のグローバルインフレを含め、歴史的に大きく物価が変動する際、中央銀行など専門家ほど見通しを誤ることが指摘されています。日本も同じ失敗を犯すリスクがあると懸念し、本書を執筆しました。

 欧米の中央銀行は、コロナに伴う世界的なサプライチェーンの寸断や労働供給の減少、ウクライナ戦争による資源価格高騰など供給制約に注目し、インフレは一時的で、金融緩和継続の必要があると繰り返しました。真の原因は、大規模な財政政策の継続と、金融引き締めの遅れでした。

 日本でも、欧米の中銀と同様、高インフレは一時的で、緩和継続の必要があると、日銀が繰り返しました。それが超円安と高インフレを招き、コロナ後の個人消費の回復を損なった原因です。今春にはマイナス金利を解除するのでしょうが、その後も超低金利を継続すれば、欧米と同じ失敗を繰り返す恐れがあります。

 政策転換が遅れた米国は急激な利上げを余儀なくされ、一部の地銀が破綻しました。30年近くゼロ金利が続く日本で急激な利上げを行えば、経済社会に大きな負荷がかかります。GDP(国内総生産)の2.6倍もの公的債務を抱え、その持続可能性が疑われると、金融市場は大混乱し、マクロ経済は不安定化します。

 一方で、インフレを放置すれば、実質金利が低下し、超円安インフレが繰り返します。欧米以上に日本は早めの政策転換で、漸進的な利上げを進める必要があります。インフレ目標も数字に過度に固執せず、柔軟に運営すべきです。

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