2023-11-15

【国土交通省】「ライドシェア」解禁議論 タクシー業界は強く反発

政府が、一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶ「ライドシェア」解禁の検討を本格化させる。全国の観光地や過疎地でタクシーやバス不足が叫ばれる中、解決の切り札として期待する声の高まりを受けたものだ。ただ、競合を懸念するタクシー業界が強く反発。自民党内でも賛否が分かれており、議論難航は必至だ。

「地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組む」。岸田文雄首相は先月23日の所信表明演説で、ライドシェア解禁検討を表明した。

 ライドシェアは、海外で米ウーバーなどのアプリを使ったサービスの普及例があるが、日本では「白タク」行為と呼ばれ道路運送法で原則禁止されている。ただ、コロナ禍で国内のタクシー運転手の約2割が離職。その状況下でインバウンド(訪日客)需要が急回復し、タクシー不足が各地で顕在化してきたことで、解禁を求める動きが広がった。

 口火を切ったのは菅義偉前首相だ。夏頃から各所で解禁を訴え、河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相らが呼応。さらに菅政権時代に創設された全国の首長有志らによる「活力ある地方を創る首長の会」(会員253人)が先月、国土交通省に解禁の提言書を提出した他、神奈川県が県版ライドシェア検討会議を立ち上げるなど、推進派の勢いが増してきた。

 一方、全国ハイヤー・タクシー連合会は9月下旬の事業者大会で、「解禁を全力で阻止する」と決議。国の規制の下で多大なコストをかけて安全管理の責任を負うタクシー事業者が競争上不利になる事態を警戒し、「タクシー事業の根幹を揺るがす」と反発している。

 具体化の検討は今後、政府の規制改革推進会議を中心に進められるが、河野デジタル相は「自動運転、タクシーの規制緩和、ライドシェアを組み合わせていきたい」とタクシー業界とのバランスにも配慮する姿勢を見せている。まずは地域や時間帯を限定した導入になる公算が大きいが、「地域の足」確保にどれだけ有効な対策となるかが問われそうだ。

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