製品、コンビナートの「最適化」を進める
─ 世界が変化する中ですが、三井化学自身はどのような道筋で成長していこうと考えていますか。
橋本 当社は長期計画の中で、「ライフ&ヘルスケア」「モビリティ」「ICT」の成長領域の拡大、「ベーシック&グリーン・マテリアルズ」事業の再構築、ダウンフロー強化とグリーン化推進を掲げていますが、成長領域は引き続き堅調です。
例えば自動車は一時的に厳しい時期はありましたが、半導体不足の問題も解消して生産が戻ってきていますし、ライフ&ヘルスケア領域は極めて堅調です。また、半導体のシリコンサイクルは底になっていますから、今の状況を見ると来年度くらいから戻ってくると見ています。
─ 国内の石油化学、特にコモディティ分野の現状は?
橋本 我々もコモディティ分野はボラティリティ(変動性)が高く、利益が大きく振れます。その振れをなくすために、再構築などを積極的に行っています。例えば鹿島工場(茨城県)を閉鎖したり、海外のコモディティ分野の合弁会社から当社のシェアを落としたりという努力をしてきました。
さらに最近では、自動車や建材などに幅広く使われる基礎化学品であるフェノールについて、シンガポールの子会社を英化学大手のイネオスに売却したり、山口県にある高純度テレフタル酸(PTA)の日本最大の工場を23年8月に停止しました。
このように石油化学のコモディティの再構築を進めてきていますが、先程お話したように中国の影響が出てきていますから、これで終わりではなく、もう一段進めていく必要があります。
─ 石油化学コンビナートの生産能力についてはどう考えていますか。
橋本 個別の製品ごとに能力最適化をやっていきますが、コンビナートごとの最適化も進めていきます。ただ、環境負荷の低減は避けて通れませんから、グリーン化とセットでコンビナートの最適化をしていきます。
将来的にもリサイクルや、原料を化石原料から転換していく、あるいはCO2削減のためにアンモニアを使うなど、様々な方式を模索していますが、そもそもの需要が減少しています。その中で能力の最適化をしていかなければならないのです。
─ 攻めと守りの両方をやっていく必要があると。
橋本 そうです。我々は千葉県の市原地区と大阪府の泉北、高石にコンビナートがあります。市原地区は日本最大の化学製品の生産出荷拠点ですが、我々1社だけでは最適化はできませんから、自治体や他社、お客様と連携して進める必要があります。
具体的には、すでに丸善石油化学、住友化学と当社の3社で検討を始めており、この地区におけるコンビナートのグリーン化を意識した新しいコンビナート構想の検討を進めています。
また、大阪地区には当社のナフサクラッカーしかありませんから、近隣の大阪ガス、関西電力と協力して、将来のグリーン化を睨んだ取り組みをしています。
三井物産、関西電力、IHIとは、水素・アンモニアのサプライチェーン構築に向けた共同検討を進めていますし、大阪ガスとはコンビナートから出るCO2を回収し、メタンやメタノールなどの原料にする「CCU」や、地下に貯留する「CCUS」に関する検討も始めています。