2023-10-24

大坪会会長/青淵学園理事長・大坪修氏が語る「医療と福祉を通じて社会に奉仕するためには臨床・教育・研究の3本柱で」

大坪修・特定医療法人 大坪会会長/学校法人 青淵学園理事長



皆が嫌がることを引き受ける

 ─ 医療機関でも大学でも臨床のみならず、研究などの面でも貢献したのですね。

 大坪 ええ。他にも大坪会グループには「健康医学協会」という健康診断や人間ドックといった二次健診を手掛ける一般財団法人があり、検診車も30台近く持っていますので、出張健診し受検者のコロナ抗体の有無も調べたりしましたね。全国で年間200万人に及ぶ巡回健診を行っており、勤労者や住民、学生などの健康管理に寄与してきました。

 東京都板橋区に「労働保健協会」があり、そこで板橋区のコールセンター業務を引き受けました。10人の看護師達が身を粉にして年間4万3千件に及ぶ対応をしました。

 ─ コロナ感染拡大当初、患者を受け入れない病院が出て来たりましたが。

 大坪 我々の「三軒茶屋病院」「東都文京病院」「東和病院」は東京都内でもいち早く患者さんの受入れを表明しました。透析医会の災害時ネットワークがあり、12年前の東日本大震災と同様に今回のコロナに感染した透析患者を他の施設からも受け入れました。そして「上野病院」は台東区民のワクチン接種を行いました。

 そもそも大坪会は医療と福祉を通じて社会に奉仕する事を理念としています。国内は高齢化問題を含めて複雑化し、病院だけでは不十分で、社会福祉も含めた総合的な観点で対応できるシステムが求められます。ゆりかごから墓場までではなく、生前より墓場までの対応が必要です。そこで社会のニーズに合わせて様々な施設を増やしてきたのです。

 その結果、病院は17カ所、診療所は5カ所、訪問看護ステーションは5カ所、介護老人保健施設は9カ所、特別養護老人ホームは3カ所、地域包括支援センターは5カ所、訪問介護事業所2カ所になりました。

 ですから大坪会は予防医学、総合病院、専門病院、中間施設としての介護老人保健施設、デイケア、在宅医療としての在宅介護支援センター、訪問看護・介護、老人ホームなど、医療と福祉に総合的に取り組んでいるのです。そして大坪会は皆が嫌がるものでも引き受けるというポリシーを貫いています。それが地域医療を守ることにつながるからです。


日本初のエクモの開発者として

 ─ 大坪さんは世界初の中空線維膜型人工肺のエクモを開発しましたね。コロナでもエクモがたくさんの人々の命を救いました。

 大坪 そうですね。エクモの研究開発は1970年代から始めました。私が東京大学医科学研究所の講師だったときに、他学部のメンバーも集め研究チームを組織し、人工臓器開発を進めました。

 当時、日本では数少ない医師、獣医師、工学士、栄養士、薬剤師、メーカー連携のチームワークで理研より年間1000万円の予算で人工臓器移植の研究を行いました。世界で最初の中空線維膜型人工肺を始め、コンニャクマンナンコーティング活性炭服薬剤、吸着式肝補助器、超音波メス、携帯型透析装置、自動腹膜潅流装置等を開発しました。

 米国で透析のダイアライザーとして中空線維が開発され、これを人工肺に使えるのではないかと考え、1960年代に動物実験でその有効性を証明しました。当時人工肺は、レコード盤状ステンレス30枚を並べたものを血のプールに半分沈め、回転させ空気にさらすことにより血に酸素を送り込む方式でした。

 中空線維膜型人工肺は100分の1以下の非常に小型な物で、学会発表にはテルモのスタッフも共同研究者として発表しています。これを製品化したのはテルモです。テルモと体内に埋め込み型の人工腎臓という共同研究をずっとやっていたのです。

 ─ そういった企業との縁もあったのですね。大坪さんのこれまでの人生経験を通じて、学生達にはどのような言葉を投げかけているのですか。

 大坪 人間共同体社会にあっては、どんな人でもお互いに必要としているという自己認識が必要です。お互い信頼し、貢献し合う共同体意識を持つことが大切だと思っています。ここで大切なことは共同体の単位です。共同体は家族、会社のレベルから政治、経済、宗教、言語、文化で構築された団体、国家などいろいろあります。

 人類の共同体国家の歴史は戦争の歴史で、アメリカファーストのトランプ氏はメキシコとの国境に高い塀を築き、プーチン氏は第二次世界大戦の傀儡・満州帝国を真似し、ウクライナ侵略戦争です。しかも原子力爆弾の使用すらちらつかせる有様です。

 このように人間は第二のプロメテウスの火、原子力で生物どころか地球環境をも破壊しかねない状況です。正しい共同体意識とは生きとし生ける生物は無論、地球、宇宙の過去・現在・未来を含む全ての共同体意識を示します。一人ひとりが正しい共同体意識を持つべきです。

 地球環境汚染予防は誰にでもでき効果も目に見えるが、誰もがやらなければ効果がありません。政治の問題は簡単にはいかないと思いますが、運命共同体の言葉があるように地球という舟の中、呉越同舟の国々が争っている、さあどうするか。私たちに課せられた問題です。

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