2023-10-13

今や、都内の3台に1台が『S.RIDE』 なぜ今、ソニー発・タクシー配車アプリが人気なのか?

今や、都内の3台に1台が『S.RIDE』のタクシーだ



呼ぶ・支払うだけの機能が成熟化する中で…



 S.RIDEは2018年に「みんなのタクシー」として設立。ソニーグループ(以下、ソニーG)が持つAI(人工知能)やIT技術を駆使して、タクシーの配車サービスや決済代行サービスなどを手掛けてきた。

 最大の特徴は独自のデータ活用によるAI需要予測。過去の顧客の乗車データを収集し、どの時間にどこに車を走らせていれば、顧客が捕まりやすいかをAIが算出。タクシーにあるカーナビから運転手に知らせることで、より顧客の捕まりやすい状況をつくろうとしている。

「ベテランのドライバーは過去の経験から、ここにいたら乗る人がいると分かっているが、AI需要予測を活用すれば新人さんでもお客さんをしっかり捕まえることができる。しかも、電車が止まっているからこの駅に人が多いとか、イベントが終わったのでここに人が多いというような、突発的な事象を教えてくれるのでドライバーはかなり助かると思う」(橋本氏)

 すでに提携先の一つ、大和自動車交通ではアプリ導入後、売上が約10%アップ。乗務員の採用や内諾率も軒並みアップしたという思わぬ結果も出ている。

 タクシー業界を見渡すと、タクシー運転手の人手不足は深刻な事態。コロナ禍で人の移動が減り、タクシー需要が減少。離れていった運転手が戻らず、コロナが収束して人の移動が回復した今、営業所にタクシーはあるのに、運転手がいないためタクシーを配車できないのだ。

 そうした状況の克服に向け、テクノロジーの活用で人手不足の解消や売上増につなげることができれば、タクシー業界にとっても大きな意味があるのではないか。

「タクシー産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな課題となる中、AI需要予測によるドライバー支援など、われわれが貢献できる役割はまだまだある。需要の多い時間帯に、最適な供給(タクシー)を配置することを第一に考えていて、需要の無いところで待っていても意味はない。需要のあるところに供給を促してあげることが大事だと思う」(橋本氏)

 現在はラグビーのワールドカップが開催中だが、日本代表の応援につながるよう、代表選手の特別デザインでラッピングされたタクシーも走行。アプリから指定配車すると、日本代表応援ギフトが抽選で当たる他、ソニーGの人気アニメ『シティーハンター』とコラボしたタクシーも登場。配車すると携帯電話にテーマ曲が流れ、車内で前作の映画が鑑賞できるという。

「多くのアプリが登場する中、もう移動の呼ぶ・支払うだけの機能は成熟化してきて、乗った時の楽しさや移動体験、誰もが乗りたくなるような仕掛けは世界でもまだ手を付けられていないところだったりする。エンタメやスポーツのコンテンツを交えながら、呼ぶ・払う以外の移動体験をもっと楽しんでもらえるような仕組みをつくっていきたい。これがソニーらしさかもしれない」と語る橋本氏。

 ソニーGのパーパス(存在意義)は『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。』というもの。タクシー配車アプリの開発においても、その原点は変わらない。

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