時代の変化に合わせ変わるビジネスモデル
三井住友トラストグループでは今年、自らが目指すべき数値目標として「AUF」(Assets Under Fiduciary)という指標を導入した。この指標は「社会課題解決と市場の創出・拡大に貢献する取り組みの規模を示す残高」だとしている。
2030年度の目標として掲げているのが、現在約480兆円のAUFを800兆円、グループ資産残高を215兆円(現在約120兆円)、資産管理残高を460兆円(現在約250兆円)に拡大すること。
なぜ、AUFという概念を掲げたのか。「これまでのように、自らバランスシートを拡大するということではなく、全体のパイが大きくなり、資金が回っていけばいくほど、信託グループの機能を生かした接点が増え、資産管理残高や資産残高も伸びてくる」
AUFの導入は、同社が携わっている様々な資産を大きくし、全体のパイを大きくしていくことを目指す姿勢を表している。このAUFの拡大は、日本経済全体のマーケットが拡大しているという証でもあるということ。
このAUFを掲げられたのは、統合から10年以上が経ち、会社としてのステージが変わってきたことも背景にある。統合当初は、会社としてのステータスを上げるためにバランスシートの残高を伸ばす局面もあった。
だが、銀行業務ではバランスシートを増やすと、それだけ資本が必要になりROE(株主資本利益率)が上がりにくくなるというジレンマがあった。
しかし今は「統合から10年が経過した今、安定した手数料収入が結構なボリュームになってきた。銀行業務のバランスシートを拡大して収益を稼ぐだけでなく、オフバランスの資産運用管理残高で収益を稼ぐことが可能な収益体質になった」(大山氏)
今後、バランスシートは前述のように、プライベートアセットに取り組む際に一時的に抱えるなどといった戦略的な使い方になってくる。他にも、政策保有株式を削減して得た資金を生かして、脱炭素などにつながる「インパクトエクイティ投資」を2030年度までに5000億円行う考え。
「当社が投資することで、投資機会も生まれる。そこにお客様の資金を投入し、我々が管理、運用していく。バランスシートを戦略的に使うことで、資産運用管理残高を増やしていくことが、我々のビジネスモデル」
時代の変化に合わせて、信託銀行としての収益の上げ方も大きく変わってきている。