2023-10-05

河北医療財団理事長・河北博文氏の提言「ポストコロナではなく、コロナ前から抱える日本の課題の解決こそ」

河北博文・河北医療財団理事長




日本人が持つ「同質性」という課題

 ─ 日本が輸入する場合の価格が上がり、それも物価高の一因になっていますね。

 河北 ええ。輸入価格が猛烈に高く、食料品、日用品が高くなっている。円安、円安と言われますが、日本にとって適正なドルとの交換レートがいくらなのか、国は国民ときちんと対話すべきです。我が国の国益を他の国に取られているという観点を持つ必要があります。

 また、全く違う視点の課題で言えば「休めない日本人」という問題があります。なぜ、夏はお盆の時に集中して休まなければならないのか。近年、政治は旗日をつくって3連休を増やしていますが、それは3連休がないと日本人は休まないからです。

 ただ、3連休は混みますし、いろいろなものの値段が高くなります。本来は旗日を増やすのではなく、もっと自由に休むことができる仕事の仕方を構築しなければいけません。

 ─ みんな一緒に休みと取るというのは日本人の同質性によるものでしょうか。

 河北 まさにそうです。なかなか自分で考えられず、他の人と同じでなければいけないと思ってしまっている。国民性の問題だと思います。

 今、日本は1年間で子供が約75万人しか生まれない時代になってしまいました。団塊の世代が約270万人ですから、4分の1です。その社会に活力を持たせるにはどうすればいいのか、これが最大の課題です。

 その時に「みんなが同じ」では活力は生まれません。いかに他の人と違うように物事を考えられるか、そういう人を育てる教育が必要です。

 教育機関の側も改革が求められます。今年に入って京都市内で3カ所の看護学校が閉鎖になりました。また今後、大学の閉鎖も相次ぐという見方がありますが、これらは人口減少と、学生達に対する大学の魅力がないからです。

 ─ 今は専門職大学など、実際の職業につながる教育を重視するところも増えてきました。

 河北 ええ。教育は継続が大切です。継続して習慣化する必要がありますが、今はそういうことが大切だと教えなくなってしまっています。

 米国にとって教育は「貿易財」です。ハーバード大学やスタンフォード大学は世界各国から人材を集めていますが、入学者はお金を払ってでも勉強がしたいわけです。教育に魅力がある国は栄えます。一方、日本の大学に行きたいという海外の若者がどれだけいるか。今の日本の大学、専門学校は「ぬるま湯」に浸かった状態です。

 ─ 河北さんはハーバード大学とシカゴ大学に留学した経験がありますが、当時から日本の同質性は感じていた?

 河北 帰国した時に一番感じましたね。まさに同質性の社会で、異質なものを全く認めない。

 今、世界的にIT大手の「GAFAМ」が席巻していますが、私は、日本人はインターネットのような「目に見えないもの」を動かすのが不得意なのではないかと思っています。一方で目に見えるものを製造していくのは得意ですから、頭の使い方が違うのだろうと思います。

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