2023-08-30

【三井農林】「若い世代を紅茶ファンに!」〝健康〟に商機を見出す市場掘り起こし策

佐伯光則・三井農林社長



AIでパッケージを選定

 今の10代から30代といった若年層の消費行動はモノからコトそしてトキにシフトしつつあり、ワークライフバランスの充実などを重視する傾向にある。

 こうした消費者の多様化と向き合い、ニーズにいち早く対応するためには、「最先端のデジタル技術を活用し、スピード感を持って新商品を投入して市場に問うていくしかない」と佐伯氏。そこで2021年から22年にかけて日東紅茶ブランドをバーチャル体験できる公式オンラインショップ、業務用商品を取り扱う公式オンラインショップなどを矢継ぎ早に展開。さらにはSNSの活用も加速した。

 同社のDXによる成果も出ている。AIによるパッケージデザイン評価やSNSデータ解析によるトレンド予測を導入したことで生まれたのが前出の「ミルクとけだすティーバッグ」だ。

 同商品のパッケージ制作にはAIによるデザイン評価を取り入れた。複数のパッケージデザインのうち、どのデザインが商品のコンセプトに合致しており、消費者に受け入れられやすいかをAIに判定させたのだ。

 紅茶飲料市場では大手飲料メーカーなどが鎬を削る。その中で茶葉を提供する同社は「日本で生まれ、日本人に合った商品をつくってきた日本で初めての紅茶メーカーだ」(同)。リプトンやトワイニングは共に海外ブランド。一方で三井農林は三井合名会社が直営事業として農林・製茶事業を手掛ける農林課を前身とする。

 1927年に日本初の国産ブランド紅茶を投入し、38年には東京・日比谷にある現在の宝塚劇場の隣に「日東コーナーハウス」を開業して紅茶の美味しさや楽しみ方の普及にも努めた。

 三井物産会長(当時、現顧問)の飯島彰己氏に言われた言葉が今も佐伯氏の脳裏に焼き付くという。「離任の挨拶をした際、三井グループの中で会社のロゴマーク『井桁の三』の外に〇が付いている企業は三井本家が直接担っていた事業会社であることを教えられた」。それだけに責任の重さを感じると話す。

 しかし、事業環境は厳しい。紅茶の原料である茶葉はスリランカやインド、ケニアなどからの輸入に頼る。足元の円安下で原材料価格の高騰は逆風だ。

 その中でも「いかにこれまで積み上げてきた技術力を生かして高付加価値な商品を投入していけるかだ」と佐伯氏。同社は8月下旬にも「ミルクとけだすティーバッグ」の技術を活用した砂糖不使用のカフェラテ、キャラメルラテを新商品として投入し、コーヒー市場にも参入する。

 かつては「舶来の高級品」「ハイカラな飲み物」と言われてきた紅茶。その紅茶に新たな価値をつけて市場の掘り起こしを狙っていく。

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