2023-08-25

クラウドワークス社長兼CEO・吉田浩一郎が語る「個のための雇用インフラを充実させていきたい」

吉田浩一郎・クラウドワークス社長兼CEO



江戸時代の「働き方」に回帰しつつある

 ─ 「人への投資」など労働市場改革は新しい資本主義の中核だと言っているわけですね。

 吉田 そうです。今後、リスキリングの推進によって、個人がいろいろなところで働きやすくなっていくと考えています。

 そもそも労働の歴史を振り返ると、今の働き方になったのは明治維新からになります。国と企業と個人が一つのつながりで働くというモデルを導入してきたのですが、その前の江戸時代はいま始まっているコミュニティの雰囲気に似ていたんです。

 当たり前に家業があって、地域に所属するコミュニティとして火消しや消防団があって、趣味のグループがある。1人がいろいろなコミュニティに所属するというのは割と当たり前だったのです。ですから、皆が分散して存在していたのです。

 そして明治維新以降、家業を廃し、企業の中に所属する形にして国力増強、富国強兵ということで進めてきました。

 ところが今は再び江戸時代のように、個人が家族の範囲でコミュニティに属したり、自分の趣味で何かを始めたり、個人で働く場所があるというようなコミュニティのあり方が当たり前になってきているのではないでしょうか。

 ─ 企業として今後の役割をどう考えていますか。

 吉田 過去十数年の中で、障害者の就業支援や被災地復興、地方創生、1人親就業支援、養護施設などに関わる様々な団体からご連絡をいただいてきました。当社のミッションである「個のためのインフラになる」のインフラというのは、こういった多方面からの要望にも対応できることだと思っているんです。

 例えば水道や電気は誰でも使えますし、バスには誰でも乗れます。それがインフラの姿だと思っていますので、我々もそんな存在を目指そうと思っています。その中で、民間企業として解決できないこともあります。

 そこで私は個人で一般社団法人「災害時緊急支援プラットフォーム(PEAD)」を立ち上げました。有事の際、機動的に災害に対する支援を行う組織で、創業起業家の個人が約70人、ボランティア約200人を組成して取り組んでいます。


働くことに対する若い人の意識の変化

 ─ 吉田さんが社会貢献活動に一生懸命取り組むようになったきっかけは何ですか。

 吉田 一つは南相馬市の復興です。最初は喜んでもらえると思っていたのですが、どこの行政にも政治があり、喜んでくれる人たちと、そうでないところがありました。我々はそれまでビジネスしか知らなかったので、あまり喜んでいない人が多いことにショックを受けました。

 社会は複雑で、結局、政治・行政に関わっていかないと、最終的に働き方を含めて世界は良くなっていかないのだと痛感しました。ただ、その時に役に立ったのが上場企業の名刺です。

 行政からすると、ボランティアであれば誰でも信用できるわけではありません。ボランティアに関して事件や事故が起きても責任が取れないのです。しかし、会社の名刺を持って「上場会社の社長です」と言うと、信用が置けるということで歓迎していただけるのです。

 災害支援の現場でも社会的信用が役に立つということが分かりました。その後は平時からボランティアを育成し、信頼できるボランティアを送るための包括協定を自治体と結んでいます。

 ─ 今の若者の間にはボランティア精神が強まっていますか。

 吉田 ええ。当社はテクノロジー企業で営業とエンジニアが半々になります。リアルな対面で集まるイベントもあるのですが、リモートワークも推奨していますので、なかなかエンジニアは出社しないんです。あまり強制もできませんしね。

 でも災害支援のイベントには普段顔を見ていなかったエンジニアが現れて、「わたしはボランティアに興味あります」と言い出して出社してくる。こういうところでは対面で会社に来るんだと思って面白かったです。

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