2023-07-26

JSRを買収、JICキャピタル・池内省五の〝決断〟「国際競争力の向上に資する産業再編を」

池内省五・JICキャピタル社長CEO



国の主導で本当にうまくいくのか?



〝産業のコメ〟と呼ばれる半導体。かつて、日本は1970年代から80年代にかけて世界を席巻し、80年代後半には世界シェアの約5割を占めていた。

 しかし、日米貿易摩擦や〝失われた30年〟を経て、日本勢は徐々に投資余力を失った。この間、韓国や台湾が力をつけ、継続的な投資が必要な半導体の世界で、今や日本は韓国・台湾勢に後塵を拝する形となった。

 近年は米中対立を背景に、友好国で供給網を再構築する必要があるとして、世界各国で巨額投資や有力企業の誘致が相次いでいる。例えば、半導体に関して、米国は総額527億ドル(約7兆3千億円)の補助金を用意、欧州連合(EU)も430億ユーロ(約6兆3千億円)の官民投資を計画している。

 日本もすでに計2兆円の予算を確保。TSMC(台湾積体電路製造)や米マイクロンなど、世界的に有力な半導体企業の工場誘致や投資を決めており、今後検討する支援策でさらなる呼び込みを図りたい考えだ。

 もっとも、国主導の戦略を巡っては、過去に失敗した事例もある。半導体メモリーの旧エルピーダメモリは、国の公的支援も受けたが、2012年に会社更生法の適用を申請して経営破綻している。

 この他、半導体ではないが、JICの前身にあたる官民ファンド・産業革新機構(現INCJ)が手掛けた有機ELパネルのJOLEDは今年3月に民事再生法の適用を申請。液晶パネル大手のジャパンディスプレイも、会社設立時に2千億円の出資を受けながら、9期連続の最終赤字と長期低迷中だ。

 そのため、国の主導で本当にうまくいくのか? という周囲の疑問は根強い。

 こうした懸念に対し、池内氏は「われわれがやろうとしているのは企業の救済ではない。厳しいところと厳しいところを足して再生させるものではない」と強調。

 その上で、「JSRは今の時点でも競争力があるし、そこに周辺の材料メーカーなどを統合することによって、スケールメリットを出したり、製品そのものの競争力を高めるなど、もう少し長い時間軸で他社との差別化を図っていく」と語る。

 いかにJICはJSRの国際競争力を向上させ、半導体関連の〝強者連合〟をつくっていくことができるか。池内氏の手腕が問われている。

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