2023-06-20

【日本での創業から75年】ロッテホールディングス社長・玉塚元一の「日韓連携で新しい成長を!」

玉塚元一・ロッテホールディングス社長



EV領域では、日米韓にまたがる事業戦略も

 既に、この1年半位で、日韓両チームは協力して、事業の柱を立てつつある。ロッテグループは最近、大手医薬メーカーの米ブリストルマイヤーズがニューヨーク・シラキュースに持つ工場を買収。買収した工場をベースに、医薬品の製造受託を展開していく。今後、韓国内にも医薬品受託開発製造の工場を新設していく予定で、これらの事業展開に日本側のロッテホールディングスも出資する方針。

 これから需要増が見込める電気自動車(EV)の分野でも、ロッテの持つ技術が活かされそうだ。例えば、ガムを包むアルミ箔を製造するロッテアルミニウム(韓国)。同社は研究開発を進め、その技術をリチウムイオンバッテリーの陽極材に使われるアルミ箔に応用。

 陰極材には、銅の薄い材料が不可欠だが、この技術を持つ『イルジンマテリアルズ(現ロッテエナジーマテリアルズ)』をM&Aしている。

「たまたま幸運にも買収することができました。ここはものすごい技術を持っている。この領域に関しては、いろいろな部品が使われるんですが、日本にも面白い技術を持っている会社が結構あるんです。そうした会社と僕らが一緒になったり、資本業務提携していく。そして、アメリカにも工場があるから、一緒になって、アメリカのEVバッテリー市場を攻めていこうよといった提案もしていきたい」

 日・米・韓の3国にまたがる事業戦略が構築できるということである。そうした新規事業開拓に伴う人材育成をどう進めていくのか?


なぜ今、人材育成か

 将来のリーダーとして、事業を牽引していく人材を育てようと、玉塚氏は社長就任後、『ロッテ大学』を運営し始めた。

「僕が学長なんですけど、これは一橋大学大学院の協力も得て、1年の年限で始めています。1期生約30人は卒業して、今2年目に入っています」

 マーケティングや会計学などの勉強はもちろん、他産業界の有力経営者を講師に迎え、その講師と玉塚氏がオープンディスカッションするなど、〝熱い大学〟運営を心掛けている。

「今の30代とか40代の、いわゆるブランドマネージャーたちはすごく優秀だし、もう自分たちの頭でどんどん考えるようになっていますけど、これをもっと加速化したい」

 玉塚氏は、「企業経営で大事なのはカルチャーです」と次のように続ける。

「僕はいろいろな会社をやってきて、そのことを痛感しています。やはりカルチャーって、いろいろな理由でできていくんだけれども、この企業カルチャーが、健全な挑戦を応援する文化だとか、自由闊達に意見が飛び交うとか、階層ごとの壁がないだとか、そういうベースで発展していかないと。そのベースになるのは結局、人材ですね。その人材にいろいろな教育を施して、人事改革も進める。おかしい制度があれば、やり直していく。そういうことも地道だけど、ものすごく懸命に取り組んでいるつもりです」

 玉塚氏は、工場など現場との対話、タウンミーティングを大事にする。

 なぜ、現場との対話なのか?

 玉塚氏は、「まず事実をつかむ。What’s going on・何が起きているのと。僕がワーッと言うのではなくて、それを解決できる人間を集めて、徹底的に議論して、仮説が出たら、それはすぐにやろうと。そうした話の繰り返しですね」

 玉塚氏は、これまでファーストリテイリング(ユニクロ)、ローソン各社長を体験し、企業再生支援のリヴァンプを起業するなどしてきた。それらの体験を重ねて今、思うことは何か?

「やはり組織をリードしていく人材とか、何かを成していける人材とそうじゃない人との差は紙一重だと思います。それをやろうという社会的な何かこう強い意志と、そこに向けて実は見えない所でものすごい努力をするとかね。そして、それをネバーギブアップで取り組むか取り組まないかというところで、やはり意識の問題ですよね」

 母校・慶應義塾大学ではラグビーに打ち込んだ。強豪の早稲田、明治を倒すにはと、「本当にもう死ぬほど、異常なほど練習をし、関東大学対抗戦で全勝優勝しました」と述懐。

 小泉信三・元塾長の『練習は不可能を可能にす』という言葉を今も大事にする。

 ロッテグループのポテンシャルの掘り起こしへ、玉塚氏の格闘は続く。

本誌主幹 村田博文

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