2023-02-14

米IT大手で相次ぐリストラ 日本企業への影響は?

「人材と資本を最も優先順位の高い分野に向ける重要な時期だ」。米グーグルのスンダー・ピチャイCEOは1月20日(現地時間)、約1万2000人を解雇すると明らかにした。

 人員削減は他の米IT大手でも相次いでいる。メタ(旧フェイスブック)は1万1000人超、アマゾン・ドット・コムは1万8000人超の解雇を決定。1月18日にはマイクロソフト(MS)も3月までに1万人を削減すると発表した。

 米IT各社は新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要などを受けて、従業員を増やしてきたが、直近ではコロナ禍が沈静化。インフレ進行や金利上昇で景気後退の懸念が高まり、企業がウェブ広告の出稿を控えたりデジタル投資を絞り込んだりする動きも出ている。

 一方、アップルは1月末時点で大規模なリストラを公表していない。他のIT大手よりも人員増が緩やかだったことが一因と考えられているが、「時間の問題」(業界関係者)との声もある。主力のスマートフォンの製造拠点である中国では欧米と対照的にコロナが拡大し、部品調達や生産面での打撃が懸念されている。業績への影響が大きくなれば人員削減も現実味を帯びる。

 これまでも米国では人材が流動化することによって、新事業の発掘や新産業の創出につながってきた。それが米国の強さでもあるのだが、日本では違う。

 こうしたリストラの潮流が日本のIT業界で発生する可能性は今のところ低そうだ。政府や企業のデジタル変革(DX)は焦眉の急とされ、DX需要を受けてNTTデータやTISといったIT大手の業績も堅調。それでも「米国は日本と雇用形態が違うとはいえ、いつ日本にリストラの波がやってくるのか分からない」(同)との声もある。

 それ以上に、足元の懸念は人手不足。あるIT大手幹部は「新卒も中途も、採用は相当な競争になっている」と語る。日本は海外に比べてデジタル化が遅れているため、専門人材も相対的に少ない。日本企業にとっては人材の確保が急務である。

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