2022-12-19

【西武ホールディングス】総額1000億円投資 埼玉・所沢を〝リビングタウン〟に変貌

「所沢駅西口開発計画」建物外観(イメージ)

 そんな所沢エリアをブラッシュアップするための方策を同社は相次いで展開してきた。最初の一手が18年の所沢駅東口。第1期から20年の第2期にかけて駅直結の商業施設「グランエミオ所沢」を開業させて駅を全面的にリニューアルした。それまでは所沢駅は池袋線と新宿線の乗換駅でしかなかったが、268億円を投じた駅のリニューアル後は「駅直結の商業施設で買い物や食事をしたり、行政の窓口で手続きをする人など、駅が目的地に変わった」と同社関係者は効果を語る。

 次に同社が手を付けたのが総工費180億円をかけた球場「メットライフドーム」だ。さらに「西武園ゆうえんち」もUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の再建に貢献した森岡毅氏が設立したマーケティング集団「刀」と協業して「昭和の街」のようにリニューアル。ここにも100億円を投じた。

 所沢に懸ける同社の意気込みは投資総額が1000億円というところからも感じられる。その額はコロナ前の19年3月期の同社の営業利益732億円を上回る。今回の西口再開発が完成すると、所沢駅周辺の回遊性は増し、駅からその近隣へと人の流れができると見られる。

 駅西口直近には西武とそごうの商業施設「西武所沢S.C.(ワルツ所沢)」があり、ペデストリアンデッキで地上29階建て複合タワーマンション「シティタワー所沢クラッシィ」とも接続できるようになるため、徒歩圏内で巨大なショッピングモールのように広がるからだ。

 そして近隣には鉄道で30分圏内に野球場や遊園地もある。前述の不動産会社社長は「新宿や渋谷のような猥雑さをエリア全体でつくろうとしているのではないか」と指摘する。将来は西武新宿線の高架化も進み、都心へのアクセス利便性も増す。

 さらには「としまえん」の跡地や東京の品川駅高輪口前の再開発も控える。これらが完成し、都心でもシンボルエリアを手掛ければ「都心と郊外の所沢などを鉄道に乗って移動するという需要創造にもつながる」(別の関係者)といった目論見も募る。

 西武HDの22年3月期の鉄道の輸送人員はコロナ前比で約2割減、国内ホテルの稼働率も40%台と苦戦が続く。保有していたホテルも売却した。その上、郊外地への大胆投資に突き進む同社。後藤氏の決断が沿線活性化につながり、相乗効果を生み出していくかが勝負となる。

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