2022-12-19

【西武ホールディングス】総額1000億円投資 埼玉・所沢を〝リビングタウン〟に変貌

「所沢駅西口開発計画」建物外観(イメージ)

人をいかにして沿線に呼び込むか─。鉄道各社共通の課題だ。そんな中、コロナ禍を経て俄かに今後の成長の可能性を秘めていると分かったのが〝郊外〟だ。西武ホールディングスはその筆頭格を埼玉県の所沢駅とした。社長の後藤高志氏は「ベッドタウンから仕事や遊びを目的に訪れるリビングタウンに大きく成長させる」と意気込む。所沢の大改造後には都心一等地での大規模再開発も控える。鉄道やホテルの利用者減で苦境に立たされる中でも次の一手を郊外から打ち始めている。

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埼玉県内でも人口減が続く


「所沢の再開発の総決算になる。(仕事から帰ってきて寝るだけの)『ベッドタウン』から(仕事や遊びを目的に訪れる)『リビングタウン』に大きく成長させたい」─。このように力を込めるのは西武ホールディングス(HD)社長の後藤高志氏だ。

 コロナ禍を経て都心郊外地が陽の目を浴びている。「都心の高層マンションが資材高騰の煽りを受けて買い控えが起こり始めている一方、1000万~1500万円の世帯収入がある夫婦共働き世帯が郊外で新たな物件を探る動きが活発化している」(不動産管理会社社長)からだ。

 その中で西武HDが戦略的なエリアとして近年、大型の再開発を続けざまに展開しているのが埼玉県の所沢。県内でも人口が、さいたま市(133万人)、川口市(60万人)、川越市(35万人)に次ぐ34万人という規模で越谷市(34万人)と競り合う。ただ、かつては川越市や越谷市より上位に位置していたことを考えると、所沢市としても市内の活性化は〝待ったなし〟の状況にあると言える。

 そんな中で起爆剤が出てきた。かつて西口にあった西武鉄道の「西武所沢車両工場」の跡地だ。工場を含むエリア約3万4000平方㍍に及ぶ「最後の空間」(所沢市長の藤本正人氏)の活用法について市や西武HDの関係者で協議し始めた。そして3年前に「所沢らしさ」をアピールできる再開発計画が決定した。その肝は大型の商業施設だ。

 開発のパートナーには1919年に大阪北港として設立された不動産会社で、不動産事業を祖業とする住友商事を選んだ。同社の商業施設では神奈川県藤沢市の「テラスモール湘南」がある。「高台、盛土」を意味するテラスの思想を踏まえ、「1つひとつの商業施設をその土地ならではのオーダーメードでつくる」(生活・不動産事業部門長の為田耕太郎氏)という点が「所沢らしさ」につながると期待する。

 そしてこの所沢西口再開発は西武HDにとって〝所沢の大改造〟の総仕上げに位置する。約150店舗が入居する4階建ての建物を建設し、同市が運営する公園とも隣接する。施設内にはイベントに対応するスペースや新たな交流をもたらすスクリーンのある広場空間も設けられるため、子育て世代やファミリーがターゲットになる。開業は24年秋を予定している。

 後藤氏は「利便性が高く、自然環境や文化もある所沢発展の重要なピースになる」と語る。というのも、西武HDにとって「所沢は沿線の中心衛星都市と位置付けている」(同)からだ。コロナ前の19年の所沢駅乗降客数は約10・2万人。ターミナル駅や都内の駅である池袋や西武新宿、高田馬場、練馬を除けば国分寺(約11・7万人)に次ぐ。既にそれだけの人々が行き交う地域になっているわけだ。

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