2022-12-15

【オカモト】岡本邦彦社長の「 ゴムやプラスチックを『薄く作る』技術で生活密着の製品を」

 ─ では、1つひとつの事業の収支バランスについてはどう気を配っているのですか。

 岡本 かなり細かく見ています。各部署に対して、このぐらいの利益は出せるはずだというイメージを伝え、私の頭の中にも入れています。工場に対しても同じです。当社の事業は大きく分けると次のようになります。

 産業用製品事業として、壁紙事業や車の内装材である車輛資材事業に加え、間仕切りやデスクマットなどに使われるフィルム事業に、レトルト食品やリチウムイオン電池などの包装に使われる機能プラスチック製品事業、ラップフィルム・食品用脱水・吸水シートを含む食品衛生用品事業、農業で使われる農業用フイルム事業、そして粘着テープなどの粘着テープ・工業用テープ事業です。

 一方で生活用品事業として、コンドーム事業、一般と病院向けの手袋を供給する手袋事業・メディカル事業、ホームセンターなどで販売されている天然ゴム製の長靴などを手掛けるブーツ事業、除湿剤、カイロ・温熱シートなどの生活用品事業です。

 これらの事業に対して子会社に至るまでかなり細かく経営状況をチェックしています。メーカーの基本は生産性の向上です。ただ、88年間も続くと、何となく「こんなものだろう」という雰囲気が出て来てしまう。そうではなく、しっかり危機感を持ってもらうことが私の使命だと。

 ─ 今後の海外展開についての方向性とは。

 岡本 現在の海外売上高比率は30%強です。当社の事業の中では2つの事業が海外事業を牽引しています。それがコンドームと車の内装材になります。これらの事業はまだまだ伸びると見ており、投資も継続していく予定です。ですから、結果として比率は増えていくと考えています。市場規模で言えば、現状だと北米と東アジアの2地域がツートップです。その中でも北米のマーケットは非常に大きい。

 ─ 岡本さん自身は海外を担当してきましたね。

 岡本 ええ。最初の赴任先は北米で、その後は香港にも駐在しました。当時、私が言っていたのは「バイリンガル」ではなく「バイカルチャー」。2つの文化をどれだけ理解し合うかということです。言語ももちろん大事ではあるのですが、それ以上に風習や習慣といった文化面での理解が大事だと。そこをどこまで突き詰められるかが重要だと感じましたね。

 ─ 一方で原材料費の高騰が大きな課題となっています。どう手を打っていきますか。

 岡本 当社の扱う原材料も高騰しています。その中で私の方針としては「純然たる製造業であれ」です。当社は比較的伝統的な産業に近い領域に位置しています。ですから、急激に何かに対する対処法というのはないと。やれることを忠実にやっていくことです。その意味では、足元の原材料高に振り回されず、長期的な4つの視点に立っていかなければならないと考えています。

 1つ目が環境対応。2つ目が国際事業展開の加速。3つ目が国内事業の深化。最後の4つ目が生産の効率性のアップです。これらを軸に対策するしかないというのが基本です。短期的に見れば22年は非常に厳しかったりするのですが、これを糧に長期的な利益をしっかり稼げる体制にしていくことが目標です。

 ─ 経営は長期的な視点で見ておかないといけませんね。

 岡本 そう思います。ゴム・プラスチック業界は粗利が70%、80%という業界ではありません。その割には設備投資がかさむ装置産業でもあります。やはり5年、10年のサイクルでどう事業を展開していくかが大きなキーになると考えています。

 ─ 再び国内の話に戻りますが、コンドームでは相模ゴム工業とのライバル物語が語られています。ライバルの存在をどのように捉えていますか。

 岡本 私自身、他社のことを気にする前に自分のことを気にしようと社内には言っています。ただ、相手の会社があるから自分たちの会社のこと考えることができる。株主と同じですね。外部からのプレッシャーがあるから我々も経営に対して緊張感を持つことができます。

 営業のマーケットで言えば、コンドームでは相模ゴムさん、フィルムで言えばアキレスさんといった会社がライバルとしているから我々も研鑽できる。そこに負けないように知恵を絞っていくという形で社内には発破をかけています。

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