これまでの取り組みになくて、今回あるものとして土井氏は「国立がん研究センターが介在していることが、最も大きなメリット」と自信を見せる。
第1相臨床試験(フェーズ1)のノウハウを持っているが、開発における成功率が10%以下と言われる中、「残りの90%が、なぜ失敗したかがわかっている」(土井氏)。国立がん研究センターが「ハブ」となって、他の研究者がアイデア、シーズを持ち込んだ時に成功確率を上げるためのアドバイスをしていく。
重要なのが、研究者と企業が物理的・機能的に近くにいること。「同じ釜の飯」ではないが、やはり近くで働く人達同士は距離が近づきやすい。
この環境を実現するのが、三井不動産。柏の葉スマートシティは元々、かつて三井不動産が開発した「柏ゴルフ倶楽部」があった場所に開発された。この地で約20年間、「環境共生」、「健康長寿」、「新産業創造」という3つのテーマを掲げて街づくりを進めてきた。
「街づくりはよりよい社会を創ることが使命。日本トップクラスのアカデミアと企業が連携することでイノベーションが生まれる」(三井不動産執行役員柏の葉街づくり推進部長の山下和則氏)
海外では産学が連携する拠点があり、そこから様々なイノベーションが生まれているが、日本でも遅ればせながら、その場所が生まれつつある。
国立がん研究センターによると、日本では年間約100万人が新たにがんと診断されているが、中には治療がうまくいかずに亡くなるケースもある。日本発の再生医療技術で新たな治療法を確立できるか。今回のプラットフォーム構築は、その試金石となる。