正解のない時代にあって21世紀入りして20年余の今、世界の現状はどうなっているか? その中で日本の立ち位置をどう測るべきなのか?
「これまで、しなやかな感性を磨き、たくましい知性を涵養と言ってきましたが、それに、響き合う理性を加えたのも、人類が直面している答えのない問題の解決策を自分の頭で考え抜いてもらいたいからです」と田中氏は語り、次のように続ける。
「ウクライナのようなことを見ると、やっぱり本当に苦しんでいる人達のことを考えて、そういう人の立場に立ってものを考えていただきたい。これはアダム・スミスが言っている共感、エンパシー(Empathy)ですよね。その人の立場に自分を置いてみると。それを学生たちに訴えていきたい」
東京大学に次いで日本医科大学とも提携『響き合う理性』という観点では、早稲田大学は2020年春、東京大学と歴史上初めての包括協定による教育研究連携の合意書を交わした。
この提携を進めた東大前総長の五神眞氏(総長在任期間は2015年から2021年まで)は、〝開かれた東大〟を目指し、教育・研究・財政など全体改革を推進。「早稲田には東大にないものがある」ということで、早稲田との連携にこぎ着けたという経緯。
また、田中氏は2019年夏から約1年間をかけて、日本医科大学との間で連携を話し合ってきた。
2020年9月、日本医科大学との間で、付属校の早稲田高等学院、本庄高等学院、系列校の早稲田実業学校高等部の各校から2名ずつ合計6名の推薦枠をもらうことで合意した。
「日本医科大学は今まで推薦入学をしたことがないんです。全部一般入試だった。初めて推薦入学を早稲田から選んでいただいたんです」
早稲田大学に医学部はない。平均寿命が男女とも80歳以上を超え、人生100年時代が到来しようとしている時に、この医学領域に早稲田はどう関わっていくのかという命題を抱える。
「今の医学の研究も教育も診療も、医学博士だけでは十分ではない。医学博士、工学博士の力が必要だと。それによって、医学の最先端の研究が進められて、最先端の医学教育ができる。そうしたことを医学の診療に適用できるので、日本医科大学と早稲田の連携は、日本の医療の在り方を変える可能性があると思うんですね」と田中氏は提携の意義を協調。
「やはり研究レベルの高い所であること。教育レベルも高い。そして大学的にもしっかりしている。日本医科大学は、日本の大学の医学部で最も古いんです」
1900年代に大学の医学部になったのも、日本医科大学が一番早く、これは慶應義塾の医学部よりも早い。日本医科大学の創立は、1876年(明治9年)で、早稲田の前身・東京専門学校(1882年創立)より6年早い。
こうした連携も活かして、国内外から有為な若者が〝早稲田の杜〟に集まり散じて、世界に貢献する人づくりを推し進めようという田中氏の考えである。
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