2022-04-06

社員のことはどう考える? 株主に振り回され続ける『東芝』

東芝のステークホルダーは株主だけではない



 

「企業価値向上のため、あらゆる選択肢を検討していく」

 東芝社長の島田太郎氏は、3月24日に開催された臨時株主総会で、グループ全体の2分割計画が否決されたことを受け、声を絞り出した。半導体や記憶装置などを扱うデバイス事業を分離・独立させ、発電や上下水道といったインフラサービス事業は本体に残す計画だったものの頓挫。非公開化の再検討を求める株主提案も否決され、混迷が深まる印象ばかりを与えた。

 ただ、こうした結果は想定内だったとも言える。2分割計画を巡っては、臨時総会前から“物言う株主”による反対意見の表明が続出。筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、会社分割について「中長期的な企業価値を高めるという点で大きな懸念があり、むしろ企業価値の毀損につながる可能性がある」と指摘していた。

 2分割計画自体が、東芝の迷走が続く中でひねり出された苦肉の策であった側面も否めない。2021年11月に3社分割案を発表していたが、わずか3カ月後の22年2月には2分割へ計画を修正。これも大株主の海外ファンドが3分割案に反発していたことが背景にある。

 一連の経緯を注視してきた株式市場の目は厳しさを増す。3社分割案の発表以降、東芝の株価は低迷。「市場評価は一目瞭然だ」(アナリスト)。

 従来、東芝は各事業の相乗効果が十分に発揮できない“コングロマリット・ディスカウント”に陥っていると批判されてきた。大株主の意向を汲んで策定したはずの会社分割案に反発が集まる点が、東芝の苦悩を深くしている。

 だが、東芝のステークホルダーは株主だけではない。会社の針路が決まらないままでは、社員の士気も高まってこないだろう。3月から社長に就任したばかりの島田氏は「従業員が集中して働ける環境を、いち早く株主とつくりたい」と話す。

 旧体制時に“経営者不在”と言われた東芝は、いつまで株主に振り回され続けるのか。6月開催予定の定時株主総会までに、多様な利害関係者が納得する成長戦略を策定できるか。東芝新社長・島田氏の正念場が続く。

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