2022-03-23

【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 元内閣官房副長官補・兼原信克



 ―― なるほど。自分たちは違うんだと。

 兼原 ソ連は大西洋憲章や国連憲章に署名はしているけれども、本当の意味では自由主義とか民主主義とか理解していないし、平気で武力を行使した。ハンガリー動乱(1956年)の時も、プラハの春(1968年)の時も武力行使もしています。身内(共産圏)のことは自分たちがやるから他の国は口を出すなと言うわけです。

 彼らが唯一、自分たちの勢力圏を超えたのはアフガニスタン侵攻です。この時は、ムジャーヒディーンというイスラム教の聖戦士やタリバンが立ち上がって、ソ連を撤退させたわけです。それもあってソ連が崩壊します。 

 冷戦後は、西側諸国はロシアと短い協調の時代に入ります。ロシアの存在感はどんどん希薄になりました。ロシアの経済力はもはや韓国並みなんですね。

 アメリカは、最早、ロシアは戦略的競争相手ではないと見切っているのですが、ロシアの方はかまってほしいわけです。第二次大戦戦勝国の誇りがあり、東西冷戦でも負けたとは考えていないんですよね。

 日本の場合は戦争に負けて悔しい思いをしたわけですけれども、吉田茂総理の英断で自由主義陣営に参画し、高度経済成長を遂げたし、アジアの国々も独立したし、欧米の制度的人種差別も終わったし、結構、いい世の中になったじゃないかと考えている人が多いわけですよ。

 ―― 日本人は戦争に敗れて新しい生き方を取り入れたのに、ロシア人は冷戦崩壊後の国際秩序に納得していないと。

 兼原 そうです。今もロシアは納得していなくて、冷戦に負けたとは思っていない。自分から冷戦を降りただけで、西側と仲良くしようと思ったら、子分たちが西側に寝返ってしまった。そういう感覚なんですね。

 厳しいことを言うと、ヨーロッパ内にもある種の人種意識があって、モンゴルに長い間支配されていたロシアという国を見下している。ドイツ人あたりには、そういう意識がどこかにあるんですよ。

 逆にロシア人自身は、自分たちのことを半分アジア人というかユーラシア人だと思っていて、個人主義の西欧諸国とは気持ちがしっくりこない。いわゆるドイツやフランスあたりのヨーロッパの人たちとは、ちょっと感覚が違うんです。

続きは本誌で

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