『積休バンク』とは何か?
―― コロナ禍で多くの気づきがあったと思うんですが、改めて、この2年間に感じたこととは何ですか。
中山 新型コロナの拡大によって、われわれは昨日までの常識が一変し、ある日を境に非常識となることを学びました。それでも、当社が考える「お客様が必要とする商品を、どこよりも早く確実にお届けする」という商売の原理原則は変わりません。そういうことを再認識しました。
―― 会社は何のためにあるのか、個人や社員は何のために働くのかを再確認したということですね。
中山 ええ。個人が何のために働くのかということでいえば、働き方改革じゃないですが、昨年10月から『積休(つみきゅう)バンク制度』というのを始めました。既存の有給制度を改正しまして、利用しなかった有給休暇を上限なく積み立てられるようにし、退職時に会社が使用しなかった有給を買い取るのです。
―― それは面白いですね。こういう制度は日本で初めてじゃないですか。
中山 初かどうかは分かりませんが(笑)、これまで当社では、有給の上限は60日まで積み立てられるようになっていました。普通の会社は40日ぐらいなので、それでも多い方だったと思うのですが、ふとしたことから上限を撤廃したらどうだと。
ふとしたことというのは、ある時に物流のセンター長のスケジュール表を見ました。それは飛び石連休が入っている時のスケジュールだったのですが、それを見て人繰りが大変だなと思いまして、何とかしてやらないといけないと思いました。
―― 物流倉庫の人手不足という問題ですか。
中山 人手不足というよりは、人の配置の問題です。
旅行に行くのでも、親の介護でも、理由は何でもいいのですが、この日はちょっと休みたいと思う日がありますよね。
ところが、物流センターに人がいなかったら、センターが回らない。だから、センター長のように現場を預かる立場としては、誰かが急に休んだりすることを考えて、余分に人を張り付けておかないといけないわけです。ですから、そういうことが少しでも緩和されれば、運営上のコストも多少はダウンできるのではないかと。
そこでふとひらめいたのが、有給は使わないと損だと考えるのが普通ですけど、これからは有給を貯めたら安心だと考えられるように、発想を変えたらどうかと思ったんです。