2022-03-03

反転攻勢の狼煙となるか?【西武HD】が31施設などを売却

売却が決まった「ザ・プリンスパークタワー東京」

「ホテルオペレーター(運営事業者)として、業界ナンバーワンクオリティのホテルチェーン構築を目指す」─。西武ホールディングス(HD)社長の後藤高志氏はこのように強調する。

苦戦続く百貨店業界 セブン&アイが『そごう・西武』の売却を検討

 コロナ禍の21年3月期決算において、鉄道大手の中でも723億円と最大規模の最終赤字を計上していた同社が経営改革を進めている。子会社のプリンスホテルが保有するホテルやスキー場、ゴルフ場など76物件のうちの31物件をシンガポール政府系の投資ファンド・GICに約1500億円で売却する。

 加えて、1941年に東京耐火建材として創業し、過去に堤義明氏が社長や会長を長く務めた西武建設もNTT系のミライトHDに620億円で売却。後藤氏は「資産の売却で財務の改善ができたので、今後は高輪や軽井沢、箱根など、知名度の高いエリアの再開発を進め、収益を高めていきたい」と話す。

 プリンスの売却は広範囲に及ぶ。東京・芝公園にある「ザ・プリンスパークタワー東京」をはじめ、池袋の「サンシャインシティプリンスホテル」、札幌、釧路、雫石、万座、苗場、下田、京都、広島など。「恵まれた立地なのに…」と鉄道関係者からは
漏れる。

 ただ、これらの施設は「プリンス」という冠は下ろさず、運営は引き続きプリンスホテルが行う。「ホテルを自前で所有せず、運営に特化する流れが世界では常識」と同社幹部は打ち明ける。代表格が約7600のホテルを持つマリオット・インタ
ーナショナル。同社はホテルオーナーと運営委託契約をして売上高に応じて手数料を受け取る。

 今後、プリンスはマリオットと同様に運営特化型の企業として他のホテルの運営受託を狙う。今後10年で250カ所を目指すだけに、「(運営特化型で先行する)星野リゾートとぶつかることになるだろう」とホテル業界関係者は語る。コロナ前のインバウンドが花盛りの頃は〝収益頭〟だったプリンスも大胆な軌道修正を図った形だ。

 一方で後藤氏は鉄道事業でも近江鉄道の上下分離方式の検討や西武鉄道のワンマン運転の可能性に言及。今回の構造改革を反転攻勢の狼煙にしたい考えだが、コロナの落ち着きが見えない中、ホテルも鉄道も本格的な回復には時間がかかる。

「最良・最強の生活応援企業グループを目指す」と語る後藤氏。社長就任15年を迎え、真価が問われる局面を迎えている。

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