2023-11-24

テックビルケア・茶橋 昭夫社長「消防・建築防災設備をメンテ を通じて建物の未来を守っていく」

皆さんが日頃から出入りし、仕事をしたり、生活を送っている「建物」。これらは消防法に基づく「消防設備点検」、建築基準法に基づく「定期報告」などが義務付けられ、それにより建物の安全性が担保されています。

【著者に聞く】『エネルギー危機の深層 』JOGMEC調査部調査課長・原田大輔

 当社は、防災インフラに関連する各種法令検査を専門的に請け負っています。あまり陽の目を見ない業種として捉えられがちですが、消防設備の点検には資格の取得が必要だったり、参入障壁は高く、誰もが簡単にできるような仕事ではありません。それだけ付加価値の高い仕事なのです。

 しかしながら、他の産業と同様、若い人を中心に人手不足は深刻な課題になっています。一般的に防災関連の設備点検は休日や夜間など建物に人がいない時間帯で作業を行うことが多いからです。さらに、この業界特有の課題として商習慣が挙げられます。大手の管理会社から依頼された外注や下請け、孫請けがほとんどで、依頼主との直接のコミュニケーションはほとんどありません。その結果、「単に安く対応する」ことが優先されてしまっているのです。

 そんな状況を打破しようと当社は様々な取り組みを行っています。そもそも当社は私の父が1979年に「近畿クリーナ」という清掃業で起業。後に設備関係を手掛ける「ビルテクノ」という会社も興しました。清掃業務でお客様の建物に出入りして作業をしている中、「これもお願いできませんか?」と頼まれたのが点検や調査業務でした。

 お客様のニーズに応える形で資格を取得し、当社は防災というジャンルに進出しました。ただ、単に参入するだけでは価格競争に巻き込まれてしまいます。そこで2019年から社長に就いた私は07年の入社を機に、2つの会社を統合し、当社を設立しました。防災部門を会社のメイン業務へと育て上げることが狙いだったからです。

 では、具体的に何をしたのか。まずは当時の業界では未開発だったインターネット広告を手がかかりに、全国から発注をいただけるようになりました。この業界でネットを活用している業者はほとんどなかったからです。

 もちろん、全国のお客様から発注を受けるためにはサービスの向上と人材育成は欠かせません。当社は消防設備点検に限らず、建物の防災に関する法令点検をワンストップで対応できます。これが当社の強みです。

 また、私自身が素人でしたので、とにかく毎日1つでもノウハウを得ることを心掛け、消防設備士1類から7類、ドローン操縦士、住宅診断士などの資格も勉強して取得しました。

 一方で、社員への定期的なアンケートを実施、毎月全社員と面談を行い、月1回の検討会ではアイデアや意見を出し合ってもらっています。業務面でも見積書や点検表、スケジュールなど、あらゆる工程をデータ化し、クラウドサービスに統一。業務効率を向上させています。

 さらに建物の点検だけに依存していては再び価格競争に巻き込まれかねません。そこでドローン外壁調査事業や住宅診断事業への参入など、新規事業にも挑戦しています。ドローンは建物外壁調査だけでなく、ソーラーパネルの敷地や農地、物流支援など幅広いニーズがあります。

 防災は外部の人が決して立ち入ることができない場所に入ることが許されている職業です。「こんな貴重な経験ができるのか」といった声が出ることもあります。泥臭い仕事ですが、「建物の未来を守る仕事」で皆さんの安全な生活を下支えしていきたいと思っています。

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