2022-10-18

【コラム】長門正貢・前日本郵政社長「しまなみ海道サイクリング、走破!」

長門 正貢・マッキンゼー・アンド・カンパニーシニア・アドバイザー

 無趣味人間だし、家のことに殆ど関わらない家の中・怠け者だが、家内孝行も兼ねた年一回の海外旅行だけは、ほぼ毎年実行して来ていた。

 ところがコロナ問題が勃発、海外勤務中の息子家族の所へすら行けなくなってしまい、海外旅行は全くご無沙汰となって、かれこれ3年。『せめて国内旅行を』と「少人数での団体旅行の新聞広告」を目を皿のように探していた家内が突然、提案して来た。

『しなまみ海道サイクリング』。瀬戸内海に浮かぶ6つの島と6つの大橋を走破し、本州広島県・尾道から四国愛媛県・今治を目指す総距離75キロのしまなみ海道をサイクリングで走破するプロジェクト!

 家内曰く、『密になる旅行は避けたい。屋外を自転車で走るのでコロナ対策としてはベスト。今治はたまたま、父が単身赴任していた所だし』。この春、義母が90歳で亡くなった。

 四国巡礼のように瀬戸内海の島々を辿って走り切れば母の弔い・慰霊にもなる、もうすぐ父の17回忌でもあるし、と家内は説得して来た。

 気付けば6月上旬、現地で選んだ自転車に跨ってヘルメットをかぶり尾道のスタートラインに立っていた。

 天気晴朗、そして無風。息を飲む景観だった。6本の橋一つ一つが素晴らしい。堂々たる威容を誇りつつ、それぞれ姿かたちを変え、青空を背景に海上に映える。

 それら高い橋から見下ろすと、緑溢れる島々、真っ青な空を映して瀬戸の海がひたすら青く美しい。

 村上水軍だけが制御出来るか、とも思える渦潮もちょうど良いアクセント景色。海岸線の穏やかな曲線も快適で、打ち寄せる波音も心地よい。

 船のドックもそこかしこに点在していて、建造中だろうか、ドック内には巨大な船も。海道にいかにも相応しい平山郁夫美術館も佇んでいた。

 休憩所で食べたドルチェ・アイス、昭和天皇が新たな産業にと植林されたというレモンも体に沁みいる。途上、しまなみ海道の一番美しい景観を楽しめるという展望台に立ち寄ったが、その設計者は隈研吾だった。さすが!

 道中、休み休み慎重に前進を計って行き、2日掛けて、とうとう無事、走破。海道の終点には「SHIMANAMI」と書かれている大きなモニュメントが有り、そこを背景に夫婦二人で記念撮影した時は強い達成感に浸り、ひたすら気持ち良かった。義母と義父も一緒に走破した、素敵な旅になった。

 当初、我々夫妻が最高齢かと覚悟して全員で10数名のツアーに参加したのだが、出発点に立って驚いた。我々よりも明らかにご高齢の方が4、5名、居られる。

 高い高い橋の上のサイクリングロードに辿り着く為には、弱い角度でグルグル旋回しながら長距離をジワジワ上がって行く、結構きつい運動が続く。

 完走後、喫茶店での反省懇談会で伺った。このツアー完走の為、この半年、自転車に毎日乗って鍛錬準備をして来た由。偉いなあ!と、感動した次第。

 我々もこれからは無理無い範囲でチョッと頑張り、諸準備もし、時には非日常活動にも挑戦しながら、手応えのある人生を歩んで行こうと、あらためて再確認出来た体験だった。

 あ、申し遅れました! このツアーでの自転車は弱いモーターが少しサポートして呉れる電動自転車! しかも小生の自転車は文字通りのママチャリでした。

長門 正貢
ながと・まさつぐ
[マッキンゼー・アンド・カンパニーシニア・アドバイザー]


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