2021-10-18

斎藤幸平・大阪市立大学准教授が講演 「脱成長」をキーワードに、公平で持続可能な社会を

8月下旬に開催された研究会で、斎藤幸平・大阪市立大学経済学研究科准教授が講演を行った。

 冒頭で「今、資本主義の『グレート・リセット』が必要ではないか」と問題意識を提示した。

 今の経済成長を続けると、産業革命前から地球の気温上昇が1・5度を超えてしまうことは避けられない。他方、新型コロナ禍で経済格差が拡大している。ここで従来の延長線上で経済の回復を目指すと、より深刻かつ不可逆的な気候変動は避けられない。こうした事態を避けるために、新たな道を模索する「グレート・リセット」が必要だと訴えた。

 昨秋日本政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」は、成長を前提とする限り実現は難しいとした。「経済成長と、不可逆的な環境危機のデカップリング(分離)は極めて困難」だというのだ。

 先進国が推し進めるSDGsやEV(電気自動車)の普及なども根本的解決にはつながらないという。根拠の一つとしてEVを例に説明。EV生産には大量のリチウムを必要とするが、その採掘でチリの環境や生態系の負荷が増大している。

 こうした途上国に不都合を押しつけ先進国に不可視化された現状を「生態学的帝国主義(エコロジカル・インペリアリズム)」と斎藤氏は呼び、不公正かつ持続的ではないと警鐘を鳴らす。

 厳しい指摘を繰り出す斎藤氏だが、江戸時代に戻れと言うわけではない。GDPをスケールダウンし、「脱成長」「コモン(分かち合い)」をキーワードに、公共サービスの拡充や地域経済の支援などによって、平等で環境負荷の小さいコミュニティづくりを提唱する。

 目指す方向を示唆する都市の例として、400メートル四方のエリアに原則的に車を入れないようにする「スーパーブロック」というエリアの設置を進めるバルセロナを紹介した。

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