2021-10-19

コロナ禍でも新市場創出!【GMOインターネットグループ代表・熊谷正寿】の「より多くの人に、より良いインターネットを!」

GMOインターネットグループ代表 熊谷正寿

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コロナ禍を機に、在宅勤務を前向きにとらえ、未来家賃の増加を防ぎ、それを人材投資などに回す─。コロナ危機はいろいろな気づきを与えてくれた。インターネット事業に着手して26年間、「われわれが淡々と作り販売してきたプロダクトが一気に世の中に広まり、必要なものに変わりました」とGMOインターネットグループ代表・熊谷正寿氏。ネット技術が在宅勤務を支え、オンライン学習、オンライン診療とあらゆる領域にインターネットが浸透。同グループの企業数は105社に拡大、株式上場は10社にまで成長。生活に便利、取引コストが軽減されるということで、“決済代行”のGMOペイメントゲートウェイは時価総額が1兆円(9月21日時点)を超え、親会社・GMOインターネット(約3300億円)を上回る。インターネット元年の1995年から26年が経つ。過去の産業革命、あるいは大きな景気波動の“コンドラチェフの波”の60年単位の動きから見て、今は「いわばランチタイム」。これからおいしいディナーが始まるという熊谷氏の認識。NFT(非代替性トークン)などブロックチェーン技術活用で新しい市場創出へ向かう氏のキャッチフレーズは「より多くの人に、より良いインターネットを!」である。
本誌主幹
文=村田 博文

【画像】FX取引高・世界1位の企業も創った、GMOインターネットグループ代表 熊谷正寿氏


コロナ危機下でのネット事業の役割とは

 コロナ禍が始まって1年9か月。ワクチン接種の進捗もあってか、感染者数も減り始めたが、医療のひっ迫状況は続く。
 改めて、このコロナ禍をどう総括するか?

「はい、まずコロナに関しては、この2年近くというのは、もう昨年の1月末に在宅勤務をスタートした段階で、僕は2年の戦いになるよということは社内に向けて言っていたんですね。ですから想定通りに進んでいると思っています。
で、コロナ禍だからというのを言い訳にして負けているのでは、普通の会社になってしまいますので、そうした言い訳をしたくないと。禍(わざわい)を転じて、アフターコロナでより一層高い成長をするために、様々な施策が同時進行で走っていまして、それは非常に良い結果を出しているかなと思っています」

 GMOインターネット会長兼社長でグループ代表の熊谷正寿氏はコロナ危機下でいろいろな施策があると強調。

「例えば一番分かりやすいのは、在宅勤務を武器にするということです」と熊谷氏は次のように説明する。

「アフターコロナも在宅を週2日にすると、週5日のうち2日ですから40%ですよね。この40%を在宅勤務として規則正しく行っていく。
で、家賃、未来家賃と言っていますけど、これはGMO用語ですが、未来家賃の増加を防ぎ、それを利益やあるいは社内の人材投資に回す仕組みというのも走らせています」

 コロナ禍にひるまず、自分たちとしてできる事を着実にやり、それを前向きに経営の仕組みとして構築していく。
 文字どおり、『禍を転じて福と為す』の喩えで、新しい環境下で新しいビジネスモデルに転化させ、進化させていくということ。

 今年(2021年)は熊谷氏が会社を創業して30年。インターネット事業を開始して26年が経つ。その前の準備期間に2、3年を費やしているから、インターネットに関わり出したということで言うと、27~28年が経つ。

「わたしたちがこれまで26年間にわたって、淡々と作り販売してきたプロダクトが、一気に世の中に浸透し、より必要なプロダクトに変わったと思っていて、例えば、インターネット環境が在宅勤務や、在宅学習を支えています。まさに今、学習面では、GIGA(ギガ)スクール構想と相まって、もう全国の学校でわたしどものインフラを提供しています」

 GIGAスクール構想─。文部科学省が小・中・そして高等学校の学童や生徒を対象に、『1人1台のコンピュータ(端末)を』の標語の下に進めているICT(情報通信技術)化計画の一環。この構想の狙いは、若い世代の創造性を育もうというもの。

 教育のICT化ということでは、日本は他の先進国に比べて後れを取っているとされる。
 産業界では、第4次産業革命、あるいは『ソサエティ5・0(Society5.0)が言われる。
 前者でいえば、蒸気(石炭)、電気(石油)、情報(コンピュータ)に次ぐ、AI(人工知能)やインターネットなどを活用する第4次産業革命。また、狩猟、農耕、工業、情報という生き方・産業構造の視点から見た第5段階の『ソサエティ5・0』。AIやインターネットをどうわたしたちの生き方・働き方に取り込んでいくかという命題。

 教育関係者の間では、「今、学校で教えていることが、時代の変化の中で通用しなくなるのでは」という不安、また産業界で働く人の間では、「AIの急速な浸透で仕事が奪われてしまう」という不安がある。

 明日の社会を背負う若い世代にICTを馴染みのあるものにするためにはどうすべきか?

 GMOグループでは、GMOメディア(2000年設立、2015年東証マザーズ上場)がDX(デジタルトランスフォーメーション)支援として、プログラミング教室の運営などに当たる。
 今は1人ひとりの買物や業務上での決済で、お金のあり方がガラリと変わろうとしている。
 キャッシュ(現金)での支払いではなく、スマホ1つでそれは済まされるし、業務での決済、送金もスマホで簡単に行われる時代。そうした決済の仕組みがどうデジタル技術でプログラミングされているのかを学校教育の中で学ぼうというのも、GIGAスクール実施のねらいだ。

 インターネットによる取引や決済は、国と国の垣根を越えて行われる。その際、国民1人ひとりのリテラシー(能力)が海外の国々より劣っていては、勝負にならない。日本は近隣諸国より、リテラシー面で格差を付けられているという指摘もある。

 現に、今の高校卒業生の8割は、「プログラミングを学ばずに卒業し、他国に後れを取っている」という事実。
 コロナ禍で、在宅での〝個別学習〟が進み、また病気療養中でもオンライン学習ができる事も体験。学校の壁を越えて、他校との共同学習、海外の学校との連携・交流なども可能になった。

 1人ひとりの潜在能力、可能性の掘り起こしへ向けて、「われわれのプロダクトが各所で、もう様々なところで世の中に貢献できているなあということを感じています」と熊谷氏は語る。

 いま自然環境の持続性が異常気象の頻発と共に意識され、ESG(環境、社会、統治)や、国連が定めたSDGs(持続性のある開発目標)が重要視される。

「それこそ国連が2015年に、2030年に向けて設定した17のアジェンダ(戦略)で、ジェンダー格差を無くすとか、地球温暖化防止とか、いろいろなことを目標設定しました。その全てを支えているのは、実はインターネットです。インターネットがその全ての問題解決の一番ベースの所にあります」

 事実、解決すべき事は多い。

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本誌主幹 村田博文

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