2021-09-29

【自民党総裁選】新首相はまず、 国のビジョンをこそ!

民間の力、国民のヤル気を掘り起こすとき


「時代の転換期の今こそ、民間の力を掘り起こすとき」と某IT大手の経営トップは語る。コロナ危機が2年近くに及び、さらに向こう1年は忍耐が強いられる状況の中、財政出動による各種対策の実行を望む声が強い。また、〝国民に寄り添う〟という形で政治の側からも、いろいろな手当を行う案が登場する。

 今は大変な危機にあり、医療崩壊を防ぐための手立て、また自然災害から身を守る治水や堤防構築など、環境インフラ整備のための公共投資は必要。財政出動の役割も重いものがある。

 ただ、同時に経済の主体は民間という中で、民間の持つ力、もっと言えば国民のヤル気を引き出す政策をこそが今、求められるのではないか。

 昨年1月から始まったコロナ危機の中で、民間企業経営者の大半は自力で必死に生き抜こうとしている。事実、自動車を始め製造業やIT、デジタル関連の企業は増益を果たすところも少なくない。こうした企業の潜在力をさらに掘り起こすことが必要であろう。

 一方、行動の自粛で飲食、宿泊、航空・陸上輸送などは需要激減で赤字が続く。そうしたサービス産業の倒産、あるいは廃業も増加しており、こうした苦境に立つ企業への支援も欠かせない。その意味で財政支援の要素も出てくるが、民間の活力をもっと生かせないか?  という指摘である。

 今回の自民党総裁選はコロナ禍の影響を大いに受けた。昨年9月に登場した菅義偉政権は当初、世論調査で7割台の支持率を持ってスタートしたが、年明け後、徐々に支持率が低下。さらに東京オリンピック・パラリンピック(7月23日―9月5日)を境に支持率が低下。8月に首相の地元・横浜市長選で首相が推す小此木八郎候補が敗北、自民党議員の間に不安がよぎる。

 自民党当選3回生以下の若手の間で「このままでは選挙で戦えない」として、新しい政治の顔を求める声が高まってきた。

 昨秋、麻生派、そして安倍晋三・前首相が所属する細田派の支援をバックに登場した菅首相だが、今夏以降の政治情勢の変化の中で派閥の支援が得られなくなった。無派閥の首相としては、ここで万事休す。

 元々、政治は数の論理で動くし、派閥も必然的に生まれてくるわけだが、今回は派閥政治の限界を見せつけられることとなった。9月10日、総裁選への出馬を表明した河野太郎氏は自らが所属する麻生派の領袖・麻生太郎財務大臣の下へ何度も通い、出馬の『了承』を取り付けた。

 しかし、麻生派の中には岸田文雄氏(岸田派の領袖)を推す動きもある。麻生派の中も割れている。若手を中心に河野氏を支持するものもいれば、同派の幹部・甘利明・自民党税制調査会会長は河野氏を推さず、やはり岸田氏の支持に回るといった具合。これは他の細田派や竹下派などでも同じ分裂状況が続く。

 今回の総裁選について、「今は代替わりを求める声が強いとき。河野氏を推す声が強いのも、若手を中心に代替わりを求める機運が強いから」という見方。

 現に世論調査でも河野氏を推す声が一番多い。2番手に岸田文雄氏、3番手に高市早苗氏という順。

 世論の支持の内容を見ると、与党、野党のそれぞれの支持を除く浮動層は3割以上と言われる。浮動層は若い世代に多く、この世代が若返りをのぞむ原動力になっている。今の政治がこうした声をどこまで拾えるかという今日的課題である。

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